著者
飯沼 秀子
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

法令に基づき、月に一度、空気中の放射性物質の濃度測定を行っているが、放射性物質の使用がなかった実験室で、バックグランドより高い数値が検出されることがあった。検出された数値は、自然放射性物質であると考えられる。そこで、作業環境測定に及ぼす影響を知るため、自然放射性物質の測定を行った。(1)自然放射性物質の定期測定1年間、週1回定期測定を行った。試料採取はダストサンプラを使用し、ろ紙に吸着させた。採取場所は、非管理区域の屋内で行い、採取時間は8時間、採取量は約10,000L採取した。試料測定は、液体シンチレーションカウンタを使用し、採取直後から1時間測定を60回行った。また、バックグランドとして未使用のろ紙の測定値を使用した。作業環境測定への影響を知るために、同じ条件である屋内で採取したためか、採取日による測定値の変動は見られたが、季節・湿度・温度との相関は見られなかった。また、天気との関連については、採取日に雨の日が少なかったため、雨の日との関連は分からなかった。晴れの日と曇の日では、曇の日が高い傾向があったが統計的に言えるほどではなかった。また、当センターの定期作業環境測定では自然放射性物質の影響を除去するため、採取の48時間経過後に測定を行っている。経時変化を見るとほとんどの採取試料が48時間後には、バックグランドまで下がるが、採取直後の測定値が高いときなどに、48時間経過してもバックグランドまで下がらないことがあった。(2)採取した自然放射性物質の核種同定試料採取は(1)と同様に行い、名古屋大学アイソトープ総合センターにて、ゲルマニウムγ線スペクトルメータで核種を同定した結果、天候によるエネルギーのピークの位置の差はなく、4回ともトリウム壊変系列やウラン壊変系列由来の自然放射性物質であった。これらのことから、当センターでの作業環境測定に影響をあたえる自然放射性物質の基礎的な情報を得ることができたと考える。