著者
清水 祥子 加藤 孝和 飯田 みゆき 芦原 貴司
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.14-25, 2022-03-04 (Released:2022-03-17)
参考文献数
16

症例は83歳男性,高血圧症,脂肪肝で通院.初診時は53歳.30年間にわたる心電図経過の中で,5種類のQRS波形を呈した間欠性完全右脚ブロック,間欠性軸右方シフトを呈した.71歳時には洞調律で完全右脚ブロック型,QRS軸は+15°〔C15〕であったが,74歳時には洞調律で完全右脚ブロック型のまま,QRS軸が+60°と右方にシフトした〔C60〕.76歳時に心房細動が初発したが,〔C60〕は不変であった.78歳時,先行RR間隔が1.01秒以上では間欠性ながら〔C15〕に戻った.79歳時には,先行RR間隔が0.98秒以上では間欠性に不完全右脚ブロック型を呈したが,QRS軸は+60°〔I60〕のまま不変であった.80歳時には,〔C60〕,〔C15〕,不完全右脚ブロック型でQRS軸+15°〔I15〕の3種類のQRS波形を認め,83歳時には〔I60〕に加え,さらに先行RR 間隔が0.44~0.48秒と極端に短い状況では,QRS幅0.08秒でQRS軸+70°の過常期伝導と考えられる正常QRS波形〔N70〕を認めた.このように,QRS波形が右脚ブロック型のままでQRS幅とQRS軸のそれぞれが異なる臨界先行RR間隔で変化する現象は,右脚の伝導障害のみでは説明困難であり,ヒス束内縦解離によるtriple pathwayを想定することにより,はじめて説明可能と考えられた.