著者
首藤 久義
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.49-55, 2004-02-28
被引用文献数
2

日本の入門期読み書き教育は,文字法>単語法>センテンス法>物語法と変遷してきた。1886年,片仮名先習・読み書き同時方式が確立。1932年には児童の生活経験を重視する画期的なセンテンス法が出現。1947年の教科書から平仮名先習・読み先習に転換。敗戦直後は占領下で語形法的色彩が濃厚。その後,語形法的色彩が徐々に減少し,今日では絵物語法が主流。1964年,音声法による非検定教科書が出現。検定教科書に強い影響を与えた。しかし音声法には,入門期に提出可能な読み物が制約されるという問題があった。2001年にはその制約を打破する教科書が出現。同時に,自分の名前を書くことから,平仮名を書く学習を始めるという画期的な方法も出現。これは,全国共通の教科書で個に応じる学習を提示した先駆である。生活経験に根ざした言語運用の学習と,表記に関する知識の学習とが相補・並行的に行われる方向が展望されるが,その方向の芽が既に出ている。