著者
首藤 重幸
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

カリフォルニア州に進出した日本企業(牧揚経営)がおこした水質管理法違反の事件を素材にして、次の点を検討した。検討素材とした日本の親会社の基本認識は、子会社を設立する国や州の環境関係法令(本件の場合は、水質管理関係法令)を知らないままに、法律で禁止されている汚染物質を地表に散布し、民事的課徴金と刑事責任を追及されるということのようである。企業の海外進出には多額の投資を必要とし、様々な経営上のリスクが発生することについては十分な研究をして進出するのであろうが、進出場所での日本とは異なる環境法的規制の調査が不十分な場合に、どのような経営責任を追求されることになるかを、この事件は示している。そこから日本企業が海外に進出した際に発生するかも知れない環境汚染をめぐる様々なトラブル(これを環境行政リスクという)に対して、どのように予防的対策を講じるべきかの、日本企業が海外進出するさいの環境行政リスク管理ともいうべきものの必要性と内容が理解されることになる。さらに、上記の諸点の検討と並んで、日本人の役員、アメリカ白人のマネージャー、そしてメキシコ人の現場労働者という組織構成から、これらの間でのコミュニケーションの困難が、それが環境関連法規違反を導いたという事実があり、上記の環境行政リスク管理という観点からは、企業スタッフ間のコミュニケーションという点にも注目せざるを得ない。