著者
馬 雯雯
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.90-105, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
10

本研究は「女子力」を巡る記述における言語標識に焦点を当て、「女子力」ということばを考察するものである。分析に際し、まず、「女性」「女子」「女の子」に接尾辞の「らしい」「っぽい」が結び付いた言語標識を軸に、「女子力」にみられるジェンダーの要素の分析を試みた。そして、「できる」「優れている」「得意」「上手」といった動詞および形容詞を軸に、「女子力」にみられる能力の要素を探ってみた。その上で、「女子力」の使用の様相について男女別に分析を試みた。「女子力」は「女性らしさ」を構築する動的なプロセスを可視化し、「女性らしさ」のありかを示していることばである一方、「能力」としてその形式の「女子」に表われるジェンダーの境界線を越え、「男性」のジェンダー領域にも入っていることばであること、「女子力」の使用において、女性はそれを「ほめ」の効果のあることばとして同性に使うが、男性はそれを「冗談としてのほめ」の効果のあることばとして同性に使うことを明らかにした。
著者
馬 雯雯
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.90-105, 2019

<p>本研究は「女子力」を巡る記述における言語標識に焦点を当て、「女子力」ということばを考察するものである。分析に際し、まず、「女性」「女子」「女の子」に接尾辞の「らしい」「っぽい」が結び付いた言語標識を軸に、「女子力」にみられるジェンダーの要素の分析を試みた。そして、「できる」「優れている」「得意」「上手」といった動詞および形容詞を軸に、「女子力」にみられる能力の要素を探ってみた。その上で、「女子力」の使用の様相について男女別に分析を試みた。「女子力」は「女性らしさ」を構築する動的なプロセスを可視化し、「女性らしさ」のありかを示していることばである一方、「能力」としてその形式の「女子」に表われるジェンダーの境界線を越え、「男性」のジェンダー領域にも入っていることばであること、「女子力」の使用において、女性はそれを「ほめ」の効果のあることばとして同性に使うが、男性はそれを「冗談としてのほめ」の効果のあることばとして同性に使うことを明らかにした。</p>
著者
馬 雯雯
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.39-52, 2020

<p>本研究は馬(2019)の後続研究として、「聞き手」の視点に着目して、「女子力」がどのように使われるのかを分析したものである。馬(2019)が明らかにした「話し手」の視点からみた「女子力」の使用の様相と対照しながら、「女子力」を使用した具体的な表現、意図およびそれに対する「聞き手」の反応を分析した。「女子力」が「ほめ」の効果のあることばとして使われることは、「話し手」と「聞き手」のどちらからみても、観察されたところである。一方、「女子力」は「からかい」「忠告」「批判」の効果のあることばとして使われることが女性の「聞き手」の視点からの分析で浮き彫りになった。女性も男性も「女子力」を肯定的に使ったり、受け取ったりしているが、女性の場合は「女子力」を否定的に使われたり、受け取ったりすることが特徴的である。このことは、「女子力」の揺らぎを示している。</p>