- 著者
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馮 競舸
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
- 巻号頁・発行日
- pp.100243, 2017 (Released:2017-05-03)
1.はじめに 近年、遠隔操作により無人で空中を進むことができるドローン(Drone)に注目が集まっている。従来ドローンは軍事用、農薬散布等の産業向けに使われていたが、近年の技術革新に伴い、商用物流ドローンの活躍にも関心が高まっている。 本研究では、現代都市地域の特徴と自然農村の特徴を兼ね備え、日本の先進技術を代表するつくば市を事例に、地理学の視点から、GISを援用した土地利用解析手法を用い、商用物流ドローンの配達航路と飛行リスクを解析する。 2.方法 本研究では、商用物流ドローンを配達する際に、飛行の安全及び離着陸に影響する因子を対象として、「飛行禁止空域」及び「離着陸禁止地域」を導出する。ユークリッド距離とラスタ演算解析により、因子の影響力を推定し、つくば市における飛行リスクコストを導く。新たな最小コストパス解析方法を導入して、配達状況と目的に応じて、多様な飛行航路モデルを構築する。 3.分析 「飛行禁止空域」と「離着陸禁止地域」に関する分析では、因子の影響範囲の面積が全体面積に占める割合を算出し、因子影響力を評価した。 研究対象地域の面積約293k㎡のうち「飛行禁止空域」が約79.6k㎡、「離着陸禁止地域」が約167.4k㎡を占める。特に、都市地域では、人口が集中しているため、「飛行禁止空域」と「離着陸禁止地域」が複雑に分布する。 飛行空域のリスクを求める際に、従来の一般的リスクコスト研究ではなく、本研究ではユークリッド距離を飛行リスクとして解析することで直感的に飛行リスクを地図化することが可能になる。計算も容易である。 ラスタ演算で影響因子を統合した「飛行空域のリスク分布」から、人口集中地域では飛行リスクが高いことが明らかになった。この分布をコスト評価モデルに適用し、コストパス解析手法を通して、商用物流ドローン配達航路の解析に応用した。そして、実用化に向けて実際の荷物を配達する際に発生する様々な状況を予測し、異なる目的と場面の配達航路をモデル化した。本研究では、特に緊急医療運送を対象に、コリドー解析手法による配達圏の解析を行った。 最後に、構築したモデルの有効性を実証するためにシミュレーション分析を行った。その際、最もリスクが高いと見られる都市中心部の人口集中地域において、複数の安全飛行航路をランダムに設定し、衝突が発生する状況を検証した。その結果、すべて安全航路で衝突が発生せず、本研究の有効性が実証された。 4.結論 本研究では、商用物流ドローンの配達において、「離陸」から「飛行」、続いて「着陸」、又は「帰着」のプロセル全体を視野に入れ、リスク分析による独自の航路解析モデルを考案した。 本研究で構築したモデルでは、他の地域においても応用が可能である。また、専用のプログラム構築により、自動的に飛行航路を計算することもできる。 商用物流ドローンの実用化に向けて、地域と配達の安全を守ることにより、商用物流ドローンに対する規制について検討することが重要である。