著者
木村 優 山下 博美 駒田 順子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.400-405, 1986-04-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
24 30

水中に含まれる各種重金属類の捕集除去に対する緑茶の捕集除去剤としての利用法及びその有効性を検討した.緑茶(抹茶)を希硫酸溶液中でホルマリン処理した.ホルマリン処理を行った茶0.5gを,銀(1),カドミウム(II),ロバルト(II),銅(II),鉄(III),マンガン(II),ニッケル(II),鉛(II),及び亜鉛(II)の9種の金属元素を含む100mlの試料溶液に添加し,30分間かき混ぜた.次に,その溶液を瀕過又は遠心分離を行う.源液又は上澄み液中の金属イオン濃度を黒鉛炉原子吸光分析装置を用いて測定した.0.01moldm-3酢酸ナトリウム溶液(PH6)の条件において上記の鉄(III)イオンを除く8金属イオン(総濃度0.4~11ppm)について捕集除去率90%以上を示した。重金属類を吸着した茶からの金属類の脱離は0.1moldm-3塩酸により容易に行われ,少なくとも数回の再使用が可能であることが分かった.処理茶の水中からの重金属類の捕集除去率及び捕集容量について同一条件下で活性炭と比較した結果,銀(1),ヵドミウム(II)及び亜鉛(II)に対しては茶のほうが優れ,コバルト(II),銅(II),マンガン(II),ニッケル(II)及び鉛(II)に対しては同等であり,鉄(III)に対しては活性炭が優れていることが分かった.8-キノリノール又は1,10-フェナントロリンを溶液に添加すると,鉄(III)以外の元素の捕集除去率には変化がほとんど見られなかったが,鉄(III)のそれは約90%に向上した.他方,エチレンジアミン四酢酸イオン又はトランス-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸イオンを添加すると,銀及びマンガン以外のどの元素についても捕集率が著しく悪化した.シュウ酸イオンを添加すると,銀以外のどの元素の捕集率も悪くなった.塩化物イオン,硫酸イオン又はレアスコルビン酸を添加すると,銅及び鉛以外の元素の捕集率は悪くなったが,鉄のそれは著しく向上した.