著者
川上 清文 高井 清子
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.31-34, 2017 (Released:2017-06-30)

保育園で、自由遊び場面における乳幼児の保育者への行動を1年間縦断的に観察した。9名の保育者(4名は1歳児、5名は0歳児担当)に対する1歳児23名(女児12名、男児11名)と0歳児9名(女児4名、男児5名)の行動を、3期4回ずつ、各15分ずつ記録した。すなわち一人の保育者に対し各時期1時間、計3時間ずつ観察したことになる。観察者は、なるべく自然な形で保育者の近くにいて、乳幼児の保育者に対する行動をICレコーダーに口述記録した。1歳児は1歳児の部屋で3、4名の保育者と遊んでおり、0歳児は0歳児の部屋で4、5名の保育者と遊んでいた。乳幼児の保育者に対する行動は時期を追う毎に増加した。どの時期においても0歳児よりも1歳児の行動の方が多く、またほとんどの場合、女児の行動の方が男児よりも多かった。保育者に対する行動で多いのは“ことばかけ”と“物を渡す”行動で、1期では後者が最も多かったが、2期3期では前者が最も多い行動であった。特徴的だったのは、乳幼児が保育者を“遊びを誘う”行動や保育者の“手を取る”行動が観られたことである。乳幼児は積極的に遊びを誘ったり、場所を移動させたりした。さらに興味深いのは、保育者が玩具を布でふくのを手伝うというような行動も記録されたことである。つまり、保育園の乳幼児にとって、保育者は養育者であるだけでなく、ライフパートナーでもあるのである。