- 著者
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高井 英輔
- 出版者
- 筑波大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2012
アルツハイマー病と関連する老人班の主要成分であるアミロイドβ線維をターゲットに、大気圧プラズマの作用の新たな利用原理を開発することを目的に実験を行った。実験はプラズマを照射する時間を変えて行い、照射時間に伴うアミロイドβ線維の変化を種々の方法で観察した。その結果の1つ目として、プラズマ照射にしても線維には形状や線維長、分子量、線維量といったマクロな変化は観察されなかった。次に、マクロな変化は起きていないアミロイドβ線維のプロテアーゼ耐性を調べた。0-30minプラズマ照射したアミロイドβ線維にトリプシンを加え、24h常温で静置した後の波長350nmにおける吸光度を調べると、プラズマ照射時間に伴って吸光度が減少しており、20および30minでその値は約30%減少していた。この結果はプラズマ照射されたアミロイドβ線維のみがトリプシンの分解を受けたことを意味しており、プラズマ照射によってプロテアーゼ耐性が喪失してことを示している。実際に30minプラズマ照射したアミロイドβ線維をトリプシン分解後にAFMにて観察すると球状の凝集体となっていた。したがって、プラズマ照射によってプロテアーゼ耐性が喪失することを発見した。プロテアーゼ耐性が喪失したメカニズムを調べるため、0-30minプラズマ照射したアミロイドβ線維の2次構造をCDスペクトルで、βシート含有量をThT蛍光強度で、線維表面の親水-疎水性をANS蛍光スペクトルで測定した。すると、アミロイドβ線維のβシート含有量および線維表面の疎水性が減少していることが示唆された。以上のようなアミロイドβ線維の性質変化はアミノ酸側鎖の官能基における酸化反応に起因していると考えられ、プラズマ照射によってプロテアーゼ耐性が喪失した機構であると言える。以上の結果から、大気圧プラズマの作用の新たな利用原理としてアルツハイマー病と関連する老人班の主要成分であるアミロイドβ線維を除去するのを促進することに利用できることを提案した。