著者
高倉 瑞穂
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.49, pp.13-26, 2021-03-31

現在に伝わる身代わり説話はその対象となる仏菩薩を信仰する多くの人々に影響を与えてきた。その中で病に伏した高僧を憐れみ不動が身代わりとなる「泣不動説話」も諸作品に摂取され、多くの人々が知るものとなる。こうした諸作品それぞれに目を向けると、三井寺周辺で成立したものと巷間で広まったものとでは僧や不動霊験の描かれ方や記述の方法に差異がある。本論は三井寺の〈内〉なる作品と〈外〉なる作品を精査し、高僧の描かれ方に着目することで、三井寺を中心とした在地信仰の発展の可能性を探りつつ、それぞれの系統としての不動縁起が如何にして発展し、後代に伝播していったのかについての一考察を加えるものである。身代わり説話不動霊験三井寺