著者
高内 康司 タカウチ コウジ TAKAUCHI Koji
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.138-153, 2008-03

社会科教育において、個人の多様な意見を調整し、より望ましい解を求めて意思決定や合意形成などが行われている。これまでの学習は対話や優れた決定の技能に注目してきた。しかし、優れた技能による判断のみを市民的判断力というのだろうか。知識と技能で優れた決定はできる。しかし、それだけでは、その過程で他者の存在を結果のための思考の手がかりに見なしかねない。そもそも他者を認めるから他者と対話するのであって、他者は手がかりとして存在するのではない。つまり、市民として具備すべき資質には知識や技能以外に、他者を認めることが不可欠なのではないだろうか。そこで、本稿では他者を認める方法として寛容に注目した。まず英国の『市民と社会』の教科書を参考にして寛容の学習過程を明らかにした後、クリックの考察から寛容の定義やその内容の考察を行った。最後に、以上の結果をもとにして、今後社会科教育で寛容を扱うポイントを示唆する。