著者
高塚 真央
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

1.本研究の目的は,新しい展開型構造の提案し,その展開挙動を明らかにすることである。本研究では,特に環境問題やエネルギ問題の観点から,大型平面状構造物としての太陽発電衛星の輸送・建設問題に着目し,その平面状構造を平面直交二方向同時に収納・展開する方法を提案している。本研究ではこれまで,シザーズ機構と「立方体の対角線方向の回転軸」を用いた正方形パネルの平面直交二方向同時展開法を提案してきた。しかしながら,この方法は回転軸の角度に高い精度が要求されるという問題があるため,本研究では新たに,パネル平面に垂直な回転軸のみを用いた展開方法を提案している。本方法は,正方形パネルをある特定の規則で連結することで,シザーズ機構のような連動型の収納・展開を可能にするものであり,「展開可能な連動式パネルユニット」という名称で国内特許を取得しているが,本年度はその研究成果が国際雑誌に掲載された。2.本研究では,上記の研究課題に加え,提案した展開型構造を宇宙で展開する際の動力学的挙動の解明も研究テーマとしている。宇宙における展開型構造は,構造力学的観点から考えると,支持点が無い不安定構造であり,通常の構造解析では解析対象とされていない構造である。そこで本研究では,その問題を動力学的に扱うことで,展開時に必要となる動力や時間および部材に生じる変形や応力などを予測計算できるようにしようとしている。本年度は,その初期段階として,シザーズ機構の基本ユニットの展開中の運動方程式の導出とその数値計算を行ない,その成果を国際学会及び国内学会で発表した。また,シザーズ機構の回転軸部の摩擦力を考慮し,部材の変形や応力の計算を行なった結果が,現在国際雑誌に掲載予定となっている。