著者
高塚 聡 新川 寛二 貝崎 亮二 藤原 有史
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1096-1101, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする外用剤で,皮膚科領域の悪性腫瘍に用いられている.今回われわれは,Mohsペーストが著効した局所進行乳癌の1例を経験したので報告する.患者は70歳代女性.2009年7月左乳房腫瘤を主訴に当院を受診した.左乳房に悪臭と大量の滲出液を伴う10cm大の腫瘍を認め,生検で硬癌と診断された.FEC療法を開始したが定期的な通院が困難で,2011年5月に腫瘍からの出血のため入院した.入院後よりMohsペーストによる処置を開始した.腫瘍からの出血は速やかに消失し,滲出液や悪臭も減少した.約1カ月後腫瘍は自然に脱落した.その後全身転移のため2011年11月永眠するまで,quality of life(QOL)は良好に保たれた.Mohsペーストは局所進行乳癌患者のQOLを改善するだけで無く,積極的な局所治療の1つになりえると考えられた.
著者
藤原 有史 高塚 聡 員崎 亮二
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.622-627, 2013-08-01
被引用文献数
2

症例は82歳,女性.直腸癌に対し低位前方切除を施行し,再建はdouble stapling techniqueで行った.術後30日目頃より膣より便の排出を認め,直腸吻合部口側縁に直径約2cmの瘻孔形成を確認した.術後直腸膣瘻に対して,薄筋筋弁充填による修復術を選択した.会陰部横切開をおき膣後壁を切開し,瘻孔周囲を剥離した.直腸瘻孔部を閉鎖し,右薄筋筋弁を用いて直腸膣間隙を充填した.膣後壁および会陰部を縫合した後,横行結腸人工肛門造設を行った.術後再発なく,修復術後6ヵ月で人工肛門閉鎖を行った.修復後1年6ヵ月経過しているが,再発なく,下肢の運動機能異常も認めていない.直腸膣瘻の修復において,瘻孔切除の後に筋肉組織などの充填による膣壁と直腸部との隔絶が再発抑制に有用とされている.本例では薄筋筋弁を用いたが,過不足のないvolumeが得られ,過度な緊張もなく安全に誘導することができた.器械吻合後の術後直腸膣瘻について,文献的考察も含めて報告する.