著者
金光 真治 高尾 仁二 藤永 一弥 小野田 幸治 下野 高嗣 新保 秀人 矢田 公 並河 尚二
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.301-306, 2003-08-20
参考文献数
11
被引用文献数
4

目的・方法.癌の診断技術や治療法の進歩に伴い,生存中に重複癌が発見される機会が増加している.そこで1968年から2000年12月までに当科で経験した原発性肺癌切除例1361例のうち他臓器重複癌(三重複癌12例を含む)を伴う90例(6.6%)について臨床像と治療成績を検討した.結果.男女比は3:1(三重複癌症例はすべて男性)であった.喫煙指数が1000以上の重度喫煙者は重複癌症例では27例(32%),三重複癌症例では12例中10例(83%)であった.肺癌手術時年齢は,重複癌症例は平均64.5歳,三重複癌症例は平均70.7歳であった.重複癌臓器では胃,大腸,喉頭,乳腺,膀胱,子宮の順で頻度が高かった.死亡原因は肺癌での死亡が最も多く,肺癌先行症例での肺癌切除後の5年生存率は75.0%,他臓器癌先行症例では60.1%,同時性発症例では14.5%であり,異時性発症例に比べ同時性発症例の予後は不良であった.結語.原発性肺癌を含む重複癌患者の重度喫煙者は高率であった.したがって,第1癌の経過観察と同時に他臓器癌,特に喫煙と因果関係が強い臓器に対して注意深い観察が必要であると思われた.(肺癌.2003;43:301-306)