著者
鈴木 仁之 田中 啓三 金光 真治 徳井 俊也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.764-767, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1 2

Basedow病に胸腺過形成が合併する原因については,いまだ明らかにはされていないが,甲状腺機能亢進症により二次的に胸腺過形成が生じるという説や,ある種の免疫機構の関与を示唆する説がある.今回我々は,Basedow病に合併した胸腺過形成の2例を経験したので報告する.1例は甲状腺機能亢進症の遷延と,胸腺については腫瘍性病変の存在が否定できなかったために,甲状腺亜全摘と胸腺摘出術が施行された.もう1例では甲状腺機能は徐々に正常化したが,腫瘍の縮小を認めないため,生検が施行された.2例とも腫瘍性病変は認めず,胸腺過形成と診断された.しかし組織学的にはリンパ様過形成と真性過形成との違いが確認され,両者における胸腺過形成の背景因子ないし発生メカニズムの違いが示唆された.
著者
金光 真治 高尾 仁二 藤永 一弥 小野田 幸治 下野 高嗣 新保 秀人 矢田 公 並河 尚二
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.301-306, 2003-08-20
参考文献数
11
被引用文献数
4

目的・方法.癌の診断技術や治療法の進歩に伴い,生存中に重複癌が発見される機会が増加している.そこで1968年から2000年12月までに当科で経験した原発性肺癌切除例1361例のうち他臓器重複癌(三重複癌12例を含む)を伴う90例(6.6%)について臨床像と治療成績を検討した.結果.男女比は3:1(三重複癌症例はすべて男性)であった.喫煙指数が1000以上の重度喫煙者は重複癌症例では27例(32%),三重複癌症例では12例中10例(83%)であった.肺癌手術時年齢は,重複癌症例は平均64.5歳,三重複癌症例は平均70.7歳であった.重複癌臓器では胃,大腸,喉頭,乳腺,膀胱,子宮の順で頻度が高かった.死亡原因は肺癌での死亡が最も多く,肺癌先行症例での肺癌切除後の5年生存率は75.0%,他臓器癌先行症例では60.1%,同時性発症例では14.5%であり,異時性発症例に比べ同時性発症例の予後は不良であった.結語.原発性肺癌を含む重複癌患者の重度喫煙者は高率であった.したがって,第1癌の経過観察と同時に他臓器癌,特に喫煙と因果関係が強い臓器に対して注意深い観察が必要であると思われた.(肺癌.2003;43:301-306)