著者
高山 千尋 大野 健彦
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2011-HCI-142, no.12, pp.1-8, 2011-03-10

故障修理は日常生活のあらゆる場面で広く行われる.これはトラブルシューティングと呼ばれ,複雑な思考を伴う知的作業である.トラブルシューティングには,ゴールとする状態が明確ではない,解決への手順が明確ではないなどの難しさが存在している.専門化によってトラブルシューティングが行われる故障機器の修理や保守を行うサポートセンタなどには,熟練者と呼ばれるトラブルシューティングを得意とする人が存在する.それでは,熟練者と一般の人との違いは何であろうか?本研究では,熟練者がなぜうまく異常箇所を検出し,正常な状態に修復できるのかを明らかにすることを目指している.その第一歩として,我々はネットワークの故障修理を題材として,実際に熟練者の故障修理に同行し,その具体的な作業を詳細に分析することで,彼らが特にどのような情報に着目してトラブルシューティングを実施しているのかの調査を行った.本稿では,これら調査によって見いだされた,熟練者特有の行動と,そこから推測される熟練者の知識構造について論じる.