著者
高山 学
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.120-134, 2010-06-17

入院リスクは一般に,入院発生率と平均在院日数の積で表されるが,平均在院日数は更に,μリスク(中央値)とσリスク(平均値÷中央値)との積に分解される。入院初日より入院給付金を支払った約7万件の保険契約を対象に,生存時間解析を行った結果,AIC(赤池情報量規準)で,対数ロジスティック分布が最適であった。そこで,対数ロジスティック分布モデルで,平均在院日数をμリスクとσリスクに分解し,性別・年齢階級別に両リスクの推定を行い,σリスクの幾何学的意味を考えた。次に対象契約を性別・保険年度別・年齢階級別・選択方法別に細分化して,在院日数分布を解析した結果,若年層では対数ロジスティック分布が,高齢層では対数正規分布や逆ガウス分布が最適となる顕著な傾向が見られた。また,drift項付1次元Brown運動の通過時刻(逆ガウス分布に従う)と在院期間との類似性から,在院日数分布が決まる仕組みについて考察した。