著者
高島 永光 高本 徹也 斎藤 和行 新井 聖 阿部 隆夫
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.3-10, 2013-02-10 (Released:2013-02-13)
参考文献数
10

インクジェットプリンタに要求される重要課題の一つは,長期間において不連続に印刷を行った際にインクの吐出不良を生じないことである.ところが,コンシューマー用インクジェットプリンタにおいて,吐出不良が製品寿命より遥かに短い段階で見られ,商品の長期信頼性の観点から大きな問題を有していた.吐出不良の原因として,プリントヘッドのインク流路内に存在する小さなサイズの気泡が,インク流路内に滞留している間に大きなサイズに成長し,インク流路幅を狭めてインク流量が減少することが知られている.筆者らは,そのことがノズル穴から適正なインク滴の飛翔しない現象に結び付き,インクの吐出に悪影響を与えるだろうと考えた.この問題を解決するために,インク流路を構成する新たな樹脂材質と流路構造を開発した.材質として酸素と水蒸気ガスに対する高バリア性を付加し,流路構造として流路にバイパスとなる数個の溝と,小さいままの気泡を流路中心部へ導くリブを設置した.この解決策により,インク流量が長期間にわたって減少せず,気泡成長にかかる期間が長期化することを明らかにした.この手段により,吐出不良の発生が減少する.