著者
福永 津嵩 浜田 道昭
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.163-167, 2017-04-10 (Released:2017-04-13)
参考文献数
18

バイオイメージング技術やロボットによる自動測定技術の進歩によって,人間の目ではとても全てを観察する事が出来ないほど大規模な生物画像データが産出されるようになってきた.これらの大規模データから生物学的な知見を得るために,機械学習技術を利用して生物画像の分類やクラスタリングを行うといった研究が近年盛んに行われるようになりつつある.本解説では,このような生物画像における機械学習技術の活用例として,「能動学習・半教師あり学習を利用した生物画像データの自動分類」「電子顕微鏡画像を用いたタンパク質立体構造の単粒子解析」「遺伝子変異体の大規模行動データ解析に基づく遺伝子型と表現型の関係性解析」という3つの研究事例について,実際の画像データや生物学的背景の議論も含めながら紹介する.
著者
高島 永光 高本 徹也 斎藤 和行 新井 聖 阿部 隆夫
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.3-10, 2013-02-10 (Released:2013-02-13)
参考文献数
10

インクジェットプリンタに要求される重要課題の一つは,長期間において不連続に印刷を行った際にインクの吐出不良を生じないことである.ところが,コンシューマー用インクジェットプリンタにおいて,吐出不良が製品寿命より遥かに短い段階で見られ,商品の長期信頼性の観点から大きな問題を有していた.吐出不良の原因として,プリントヘッドのインク流路内に存在する小さなサイズの気泡が,インク流路内に滞留している間に大きなサイズに成長し,インク流路幅を狭めてインク流量が減少することが知られている.筆者らは,そのことがノズル穴から適正なインク滴の飛翔しない現象に結び付き,インクの吐出に悪影響を与えるだろうと考えた.この問題を解決するために,インク流路を構成する新たな樹脂材質と流路構造を開発した.材質として酸素と水蒸気ガスに対する高バリア性を付加し,流路構造として流路にバイパスとなる数個の溝と,小さいままの気泡を流路中心部へ導くリブを設置した.この解決策により,インク流量が長期間にわたって減少せず,気泡成長にかかる期間が長期化することを明らかにした.この手段により,吐出不良の発生が減少する.
著者
小林 潤平
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.219-227, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
61

本稿では,日本語文を読むときの速度や理解の向上を促す表示方式を紹介する.速く読むことを狙いとした表示方式では,文節の区切りを視認しやすいように文字を並べていく.この表示方式によって,読書中の視点移動がスムーズになり,読み心地や理解度を低下させることなく,自然と速く読めるようになることがわかった.よりよく理解することを狙いとした表示方式では,段落やセンテンスの区切りに配慮し,段落先頭から順にセンテンス単位で文字を退色させていく.この表示方式では,文章の要旨を把握しやすくなる効果が確認されており,退色によって段落先頭センテンスへの注意を促し,より正確な要旨把握をもたらした可能性が推察されている.
著者
木下 修一
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.543-555, 2011-12-10 (Released:2011-12-13)
参考文献数
31

構造色は自然界に広く分布していて,進化の過程で獲得したさまざまな微細構造は,フォトニクス技術の先取りとして強い関心を持たれている.構造色は,光のエネルギーをまったく失うことなく発色するので,最高にエネルギー効率の良い発色法であり,また,重金属を用いないことから環境にもやさしい発色法として注目されている.ここでは,構造色に関連したさまざまな光学現象,すなわち,薄膜干渉,多層膜干渉,フォトニック結晶,回折格子,光散乱について概説し,特に,発色機構との関連について述べていく.また,自然界での構造色の一般的な法則を明らかにし,生物における構造の多機能性についても述べる.
著者
福井 慶一 森口 航平
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-17, 2019-02-10 (Released:2019-02-13)
参考文献数
14

定着プロセスの消費電力の低減と高画質化の両面を実現するためには,トナー材料の改良による低温定着の実現に加えて,定着ユニットの温度制御や圧力制御が重要になる.本稿では,その中でも,定着ユニットの温度制御に注目し,制御システム設計で必要な豊富な機能 (プラントモデリング,制御設計,感度解析など) を備えたMATLAB/Simulinkを使用したモデルベース開発による定着ユニットの温度制御システム設計例を説明する.まず,定着ユニットの基本構造の概要を示す.その後に,定着ユニットのニップ部の温度制御システムを設計するために,定着ユニットの熱伝導を表すプラントモデルの設計,ニップ部の温度制御性能の確保とIHヒーターの入力電力の抑制を実現する最適制御の設計,さらに部品のパラメーターのばらつきを考慮したモンテカルロシミュレーションによるニップ部の定着温度の解析について示す.
著者
白岩 洋子
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.284-289, 2014-08-10 (Released:2014-08-13)
参考文献数
16

写真の修復技術はあいにく国内ではまだ馴染みが薄くほとんど知られていない.しかしデジタル媒体が主流になりつつある現在においても,過去から現在の「もの」としての写真を保存する上で重要な役割を担っている.昨今,写真の歴史的価値がますます注目され,写真作品が収集の対象となっている中,この分野に関する理解と発展の必要性を強く感じている.写真は制作,保存,展示のそれぞれの工程で劣化が起こるため,損傷や劣化の促進を防ぐための適切な対策が重要である.またそのような予防対策だけではなく,損傷を治療する修復,修理も必要な場合がある.ここでは,修復に対するアプローチ,修復工程や処置を紹介すると共に,2011年に起こった東日本大震災によって被災した写真の救済について,筆者の経験を解説する.
著者
前田 秀一
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.289-295, 2004

電子メディアの出現によって,世の中の情報の絶対量が増えるとともに,代表的なアナログメディアである紙の役割が変ってきた.従来,紙は情報の記録と表示という二つの機能を担ってきたが,記録機能については電子メディアに代替されつつある.一方で,電子メディアでは実現不可能な,紙の高い表示機能が評価されるようになってきた.その優れた視認性の理由から,紙はデジタル情報と人を繋ぐインターフェースとして必要不可欠な存在となっている.今後の紙メディアと電子メディアの関係は,オフィス文書のように共存共栄するもの,新聞のように補完関係が成立するもの,書籍の電子化にみられるように紙が電子メディアに代替されるものなどに分類できる.従って,紙メディアの使用量に多少の減少が見込まれるとしても,バリアフリー,メンテナンスフリーといったユーザーフレンドリーな特長を有する紙がこれからも生き続けることは間違いない.
著者
石川 安則 上平 員丈 谷中 一寿
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.384-392, 2009
被引用文献数
1

照明光に透かし情報を含ませて絵画や印刷物など実物体の被写体に照射することにより,被写体の画像情報とともに透かし情報を埋め込む方式を提案する.本方式によれば,電子透かしを埋め込むことが困難であった美術館の古典画などの非電子画像に対し,何ら物理的な改変を加えることなく,撮影された画像には不可視の電子透かし情報が埋め込まれる.離散コサイン変換(DCT)を用いて,8×8画素毎に最高周波数成分の極性に従って1ビットの情報を埋め込んだ照明光を被写体に照射し,透かし情報を抽出する検証実験を行った.照明光の輝度および照明光への透かし情報の埋め込み強度を変化させ,検出率の評価と,透かし埋込みによる画像品質劣化の評価,およびJPEG非可逆圧縮に対する耐性評価を行った.この結果,品質劣化が認めにくい程度の埋め込み強度においてほぼ100%に近い検出率が得られ,これより本方式の有効性を示すことができた.
著者
田沼 逸夫
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.396-400, 2007

我々は電子粉流体<sup>&reg;</sup>を用いたカラーディスプレイとフレキシブルディスプレイを開発中である.カラーディスプレイは着色した電子粉流体<sup>&reg;</sup>を用いたものとカラーフィルターを用いたものがある.また,同時にフレキシブル化にも取り組んでおり,ポリエステルフィルム基板を中心に開発を進めている.本誌ではQR-LPD<sup>&reg;</sup>の可能性に関して実用例を入れて紹介する.<br>加えて,新開発のフレキシブルドライバICを用いたオールフレキシブルディスプレイに関しても紹介する.
著者
入江 満 沖野 芳弘 久保 高啓
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.224-229, 2003 (Released:2006-07-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2

本研究は,電子画像記録の記録媒体として普及している高密度書換え形光ディスクの信頼性寿命を評価し,環境信頼性に対する標準測定手法を確立することを目的としている.本論文は,相変化光ディスクを用い,高温高湿加速試験(80°C,85%RH)を施した後,一般室内環境下で保管試験を実施し,信頼性寿命の推定及び寿命に影響を与える要因について検討したものである.寿命評価には,指標として光ディスク再生信号のバイトエラー率(BER: Byte Error Rate)を用い,光ディスクの任意領域のBER評価が可能な専用測定系を構築した.実験結果より,相変化光ディスクの信頼性寿命は,推定50∼100年という長期間であることを確認すると共に,信頼性寿命には,相変化膜の初期化状態やデータ記録時の記録速度が影響を与えることを明らかにした.
著者
村松 正吾
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.290-300, 2014-08-10 (Released:2014-08-13)
参考文献数
49

本稿では,画像のスパース表現のための冗長変換について概説する.スパース表現とは,与えられた信号を少ない数のベクトル,数列,或いは関数の線形結合により表現することを意味する.この表現は,信号モデリングに利用され,信号推定や復元,特徴抽出など多くの応用で有効性が確認されている.より良いスパース表現を得るためには,適切な信号変換の選択が必要不可欠である.本稿ではまず,スパース表現に有効な信号変換の性質として冗長性を取り上げる.次に,スパース表現の問題設定とその解法について解説する.さらに,冗長変換を利用した画像復元の応用例を示す.また,画像処理に適した変換の性質を整理し,冗長変換の設計法として辞書学習法を紹介する.最後に,関連する研究動向をまとめる.
著者
関谷 光信
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.445-451, 2008-10-10 (Released:2008-10-13)
参考文献数
12

有機ELディスプレイは自発光で高画質,超薄型・軽量で低消費電力化の可能性を持つディスプレイとして期待されている.これまで車載用ディスプレイや携帯機器用ディスプレイとして使われてきたが,当社では2007年11月に11型の有機ELテレビ(XEL-1)を発売し,有機ELディスプレイのテレビ用途としての先鞭をつけた.本稿では当社が開発している有機ELディスプレイ技術と,その優れた画質性能を紹介するとともに,今後の有機ELディスプレイの大型化に向け開発している技術に関しても紹介する.
著者
山本 裕紹
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.341-351, 2017-08-10 (Released:2017-08-13)
参考文献数
21

何もない空間に情報スクリーンを形成することを特徴とする空中ディスプレイ技術について解説する.再帰反射による空中結像 (AIRR : aerial imaging by retro-reflection) は,道路標識やライフジャケットに使われているような再帰反射素子を用いて実像を空中に形成する技術である.レンズあるいは反射型の結像光学素子を用いた空中像形成手法と比較して,AIRRによる空中表示は,大画面化のスケーラビリティーが高いこと,広い範囲から観察できる空中像を形成できること,大量生産可能な低コスト素子で空中ディスプレイを実現できることで有利である.本稿ではAIRRの原理について詳細に解説した後,LEDパネルを用いた空中ディスプレイの開発について,96インチの等身大空中映像の形成を含む大画面化とその課題である観察範囲の拡大法について述べる.さらに,開発した空中ディスプレイとユーザーのジェスチャー検出を組み合わせた自由空間で映像を直接操作する感覚を与えるインタラクションの実現について報告する.
著者
井駒 秀人
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.368-373, 2002 (Released:2006-07-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
井下 智加 平林 純 加藤 成樹 木村 純子
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.225-230, 2018-04-10 (Released:2018-04-13)
参考文献数
8

質感は,光沢感,立体感,凹凸感,透明感など,人が材質に対して感じる視覚的,触覚的な感覚を指す.貴重な文化財を眺める時であれば,そうした質感情報を通じて,強い印象や豊かな満足を人は得る.近年,印刷やCG技術が大きく向上し,質感表現を活用したビジネスが創出され始めている.我々は,従来の色のみを扱う画像の世界から,質感情報を応用した領域へ技術開発やビジネス展開を進めようとしている.本稿では,文化財保存·高品質複製を踏まえた質感再現技術を紹介するとともに,質感の定量測定を容易に行うことができる「質感測定器·表面反射アナライザー」について紹介する.
著者
内田 圭亮 小野 裕明 奥 武憲
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.282-286, 2017-06-10 (Released:2017-06-13)
参考文献数
3

昨今様々なIOTの進展により,企業は自社製品をどのように顧客が活用しているかというビッグデータを取得できるようになったが,未だビジネス上の成果に繋げている企業は未だ多くはない.当社では@Remoteという顧客のMFP等の画像機器をリモート管理する仕組を有しており,保守関連情報がビッグデータとして蓄積されている.このビッグデータを分析することにより顧客理解を進め,新たな価値提供とビジネス上の成果創出を行っている.本稿ではMFPビジネス上の成果を創出している2つのアナリティクス·プロジェクト,自社の顧客維持のために適切な営業情報を適切なタイミングでセールスアカウントに提供するマーケティング·アナリティクス,MFPの故障予兆を捉えて故障前に予防保守情報をカスタマーエンジニアに提供するプレディクティブメンテナンス·アナリティクスについて紹介する.双方共に,最終的なビジネス成果は顧客と直接相対する担当者が創出するものであり,このためデータ分析結果の現場での活用方法に徹底的に拘った.
著者
山本 一
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.415-421, 2011-10-10 (Released:2011-10-13)
参考文献数
1

特許出願は,企業等における研究開発の結果としてなされ,原則として公開されるものであるから,こうした特許情報を分析することにより,各技術分野におけるプレイヤーとその活動状況,得意分野などを知ることができる.研究開発段階や知財戦略などへの特許情報の活用を図るため,特許庁では例年,特許出願技術動向調査と称して特許出願を基にした技術動向の調査を実施しており,平成22年度のテーマとして「電子写真装置の定着技術」を選択した.本稿では特許出願技術動向調査の概要及びその調査結果を紹介する.