著者
高崎 三千代
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.10, pp.23-38, 2014-03

本研究は、メキシコの初級日本語学習者が上達させたいと考える言語能力・技能と、彼らの言語観・言語学習観(以下、ビリーフ)について、その特徴を考察したものである。上達させたい言語能力では、会話が最も高いことは想定範囲内だったが、その強さの程度や会話以外の言語・技能への希望は地域や学校種別によって異なった。ビリーフ調査で見いだされた特徴は、教室内外を問わず日本語での会話や交流を楽しみにしていること、聴解や話す活動は好むが、語彙や読解等の文字を行動対象とする学習指向は低いこと等である。加えて、言語学習について楽観的で教師の直接指導に対して期待が高いことも窺えた。近年メキシコで需要が高まっている通訳、翻訳、日本語教師など日本語での就業可能な能力に達するには効果的・効率的なコースへの改定が必要だが、教師が学習者の希望を把握し特性を生かす教授活動を行うことが並んで重要であると考えられる。