著者
西岡 和恵 高旗 博昭 冨永 和行 佐々木 和実
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.1967-1976, 2008-09-20 (Released:2014-12-03)

塩化ビニル手袋によるアレルギー性接触皮膚炎の4例を経験し,手袋の成分別パッチテストにより原因となった成分を明らかにすることができたので報告する.症例は55歳,農業,54歳,農業兼清掃業,57歳,給食業務,52歳,ゴルフ場勤務(後に清掃業)の女性4例で,いずれも職業性に発症していた.皮疹は手部から前腕の湿疹性病変で,うち3例は接触皮膚炎症候群となっていた.4例とも仕事で使用していた塩化ビニル手袋にパッチテスト陽性であり,1例で行った本人使用手袋抽出成分のパッチテストでも陽性を示した.塩化ビニル手袋の成分別パッチテストでは,2例が可塑剤のアジピン酸ポリエステルに陽性,4例が安定剤であるDi-n-octyltin-bis-(2-ethylhexyl) maleateに陽性であった.なお,4例ともMono (2-ethylhexyl) maleateに強陽性を示し,Di-n-octyltin-oxideには陰性であったことから,Di-n-octyltin-bis-(2-ethylhexyl) maleateの2-Ethylhexylmaleate部が抗原決定基と考えられた.