著者
高杉 友 近藤 克則
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.173-187, 2020-10-20 (Released:2021-10-25)
参考文献数
50
被引用文献数
2

日本の高齢者を対象にした認知症関連リスク要因を検証した研究をシステマティックレビューし,研究の到達点と今後の課題を提示することを目的とした.医学中央雑誌及びPubMed文献データベース検索とハンドサーチにより,2007年以降に発表された34編の論文が抽出された.全体の8割が縦断研究であった.残存歯数,日本食,歩行時間等の生物学要因にとどまらず,うつなし等の心理要因,社会参加,ソーシャルサポート等の社会的要因と認知症リスクとの関連が示唆された.海外での研究に比した独自性は社会的な結びつきに関連する研究が豊富なこと,認知症リスク評価スコア研究や災害地域における研究などと思われた. 今後は個人レベルの要因にとどまらず,認知症対策の新たな戦略・社会政策を検討するためのエビデンスとして,より広い地域や社会,異なる時代の社会・環境要因を明らかにしていく社会科学的研究が必要と考えられた.