著者
高杉 英一
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

当研究の目的は電磁弱統一模型の現象論的解析、およびこの模型では起こり得ないような現象の可能性を調べこの模型の妥当性を吟味することにある。そのために次のような3つのテーマについて研究を行った。1)CPの破れの起源の研究:CPの破れの起源は小林・益川機構によるものか、他の機構なのかは重要な問題である。Bメソン系でCP非対称性は純粋に弱い相互作用だけで決定されることから、CPの破れの起源解明の重要な鍵となってきた。当研究では、CPが最初から破れている小林・益川理論とは対照的なCPが自発的に破れる理論での諸現象を考察し、小林・益川理論の予言と比較した。特にこの模型ではトップクォークの質量は、500GeV程度の軽い質量でよいことや、色々の崩壊モードで差が現れることがわかった。[論文1]2)超粒子を探る研究:超粒子は超対称性理論に現れる粒子である。たいてい質量は1000GeVぐらいと考えられているが、ジーノZ^^〜と呼ばれているZボソンの相棒の質量はよく分かっていない。νの相棒のν^^〜が非常に軽い場合があるが、その場合2つの電子と共に2つのν^^〜を放出する二重ベータ崩壊が考えられている。この崩壊巾はZ^^〜の質量にのみ依存するため、二重ベータ崩壊の寿命からジーノの質量の下限がえられ、MZ^^〜>1GeVを得た。[論文2]3)ダイバリオンを探る研究:最近筑波大の岩崎らは格子ゲージ理論の計算により6つのクォークssdduuの束縛状態であるH粒子の質量が核子の質量の2倍より軽いことを示した。当研究ではN_i→N_f+H,N_i→N_f(H)+e^++νの理論計算と実験との比較を行い、M_H>18700GeVをえた。結果としてHが2つに核子の質量より軽い可能性はほとんど排除された。[論文3]