著者
戸田 弘二 高村 裕美
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.25-36, 2003-09-30

本研究では,表情以外の複数のノンバーバル行動が特定の感情状態にあるときにどのように相互に組織化されて表出されるのか,また表出者のパーソナリティ特性によってそれらのノンバーバル行動の組織化がどのように異なるのかについて検討した.実験は,28名の女子学生(平均年齢19.5歳,標準偏差1.14)を対象に二人一組で行い,悲しみ条件,喜び条件それぞれでの相互作用場面からサンプリングした2分間を観察対象とした.12種類のノンバーバル行動を指標として,その頻度をもとに相互の関連を検討した.その結果,"注意回避""意思表示""有意味動作""無意味動作""顔面以外への身体接触"の5因子を抽出した.実験前後における感情変化量をこの5つの因子得点から予測したところ,悲しみ感情は無意味動作と注意回避の増加および有意味動作と意思表示の減少から予測され,喜び感情はその逆の行動から予測されることが明らかとなった.また,パーソナリティ特性によって各感情喚起場面でのノンバーバル行動が異なることが明らかになった.本研究で抽出された5つのノンバーバル行動因子はEkman & Friesen(1969)の5分類によく対応しており,悲しみ場面では自身の感情制御に注意が向けられた結果,アダプター行動が増加したものと考察された.また,パーソナリティ特性によって各感情喚起場面での情報処理が異なり,そのことが異なるノンバーバル行動の出現に関与している可能性が示唆された.