著者
高松 大騎 小林 江梨子 伊藤 晃成 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.139-150, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
8

医療保険制度における薬剤服用歴管理指導料の算定は, 現在, 紙形式の手帳が従来より用いられている. 薬局を対象として, 紙形式および電子化形式のお薬手帳に含まれるデータの種類などを明らかにするため, アンケート調査を行った. また, 薬局に来局した患者を対象として, お薬手帳に対する患者の意識を明らかにするため, アンケート調査を行った. 1,000薬局のうち547薬局が回答を返送してきた. 対象としたすべての薬局が “紙媒体のお薬手帳” を利用していたが, “電子化お薬手帳” を “紙媒体のお薬手帳” とともに使用している薬局は, 回答した薬局の15.9%にすぎなかった. 307人の患者に回答を依頼し227人の患者が回答した. “電子化お薬手帳” を利用している患者は, 回答した患者の0.5%にすぎなかった. また, “電子化お薬手帳” に記載されている項目は, “紙媒体のお薬手帳” に記載されている項目に比べて少なく, ばらつきがあった. お薬手帳を利用している患者のうち, 20.9%はお薬手帳に自分自身で情報を記入することがあると答えた ( “血圧”, “体調の変化” など). お薬手帳に対する患者の意識としては, お薬手帳の情報を, “みせたい医療関係者だけにみせたい” とする患者と, “医療関係者ならだれでもみてもらってよい” とする患者に考え方が二分していた. したがって, “電子化お薬手帳” の運用にあたっては, “紙媒体のお薬手帳” の項目と同様の項目を網羅して記載すること, 患者の意識に応じて閲覧の制限ができることなどが必要と考えられた.