著者
太田 若菜 櫻田 大也 小林 江梨子 平舩 寛彦 千葉 健史 富田 隆 工藤 賢三 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-102, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
14

後発医薬品への 「変更不可処方箋」 について調査を行った. 2017年1~3月の任意の1週間における, 岩手県薬剤師会に所属する233店舗の薬局で受け付けた処方箋75,513枚のうち, 変更不可処方箋は7,926枚 (10.50%) であった. 変更不可の指示件数は合計17,536件であり, 当該医薬品は1,714品目であった. そのうち後発医薬品のある先発医薬品が52.70%, 後発医薬品の銘柄指定が14.86%であった. 薬効分類別にみると, 循環器官用薬, 中枢神経系用薬, 消化器官用薬が上位を占めた. 変更不可の理由としては, “患者の希望” が最も多く, “医師の意向”, “薬剤変更により疾病コントロール不良・副作用の発現” などが続いた. 後発医薬品のさらなる使用推進には, 変更不可処方箋を減少させていくことが必要である. そのためには, 後発医薬品の品質向上や適切な情報提供だけでなく, 処方箋発行システムや診療報酬の面においても対策が必要である. 今後, 複数の地域で一定期間の処方箋抽出調査などを行い, 変更不可処方箋が後発医薬品の使用推進に与える影響についてさらに検討していく必要があると考えられる.
著者
高松 大騎 小林 江梨子 伊藤 晃成 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.139-150, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
8

医療保険制度における薬剤服用歴管理指導料の算定は, 現在, 紙形式の手帳が従来より用いられている. 薬局を対象として, 紙形式および電子化形式のお薬手帳に含まれるデータの種類などを明らかにするため, アンケート調査を行った. また, 薬局に来局した患者を対象として, お薬手帳に対する患者の意識を明らかにするため, アンケート調査を行った. 1,000薬局のうち547薬局が回答を返送してきた. 対象としたすべての薬局が “紙媒体のお薬手帳” を利用していたが, “電子化お薬手帳” を “紙媒体のお薬手帳” とともに使用している薬局は, 回答した薬局の15.9%にすぎなかった. 307人の患者に回答を依頼し227人の患者が回答した. “電子化お薬手帳” を利用している患者は, 回答した患者の0.5%にすぎなかった. また, “電子化お薬手帳” に記載されている項目は, “紙媒体のお薬手帳” に記載されている項目に比べて少なく, ばらつきがあった. お薬手帳を利用している患者のうち, 20.9%はお薬手帳に自分自身で情報を記入することがあると答えた ( “血圧”, “体調の変化” など). お薬手帳に対する患者の意識としては, お薬手帳の情報を, “みせたい医療関係者だけにみせたい” とする患者と, “医療関係者ならだれでもみてもらってよい” とする患者に考え方が二分していた. したがって, “電子化お薬手帳” の運用にあたっては, “紙媒体のお薬手帳” の項目と同様の項目を網羅して記載すること, 患者の意識に応じて閲覧の制限ができることなどが必要と考えられた.
著者
岩崎 直哉 小林 江梨子 田口 真穂 山田 博章 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.247-257, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
10

地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の知事認定制度は2021(令和3)年8月に開始した.そこで,薬局機能情報提供制度の情報を活用して,各薬局の機能を分析し,千葉県の各医療圏の薬局が地域連携薬局の認定基準をどの程度満たしているのかの実態を明らかにすることを目的とした.解析には千葉県内の薬局の薬局機能情報を用い,2019年は2,405件,2020年は2,430件の薬局を対象とした.解析項目は地域連携薬局の認定基準から一部を抜粋した.全項目のうち,最も達成率が低い認定基準は “地域における医療機関に勤務する薬剤師などに対して報告および連絡した実績” であり,達成していたのは,2020年で千葉県全体の2.3%(57薬局)だけであった.無菌製剤の調剤応需体制を有する薬局も少なく,自らの薬局の無菌調剤室を利用している薬局は,千葉県全体で2020年は87薬局(3.6%)しかなかった.在宅業務の実施に関連する要因を調べるために2項ロジスティック解析を行った.結果として “麻薬の調剤応需体制を有する”,“無菌製剤の調剤応需体制を有する”,“健康サポート薬局である”,“お薬手帳(電子版)に対応している” の4項目が在宅業務の実施に関連する要因であると判明した.
著者
神田 藍 川崎 淳史 森田 理恵子 武者 愛美 櫻田 大也 小林 江梨子 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.313-318, 2013-07-31 (Released:2013-08-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

As the number of chronic kidney disease patients increases every year, a concomitant increase in drug use among patients with renal impairment is anticipated in daily clinical practice. For patient safety, drug information should be useful and meet the needs of medical workers. The aim of this study was to investigate the problem of the descriptions in package inserts of prescription drugs regarding: 1) drug administration to patients with renal impairment, and 2) effects of the drug on the kidney (hereinafter “information on renal function” ). Also, we evaluated the usefulness of the renal function information for medical workers. For this survey, 337 prescription drugs that require careful attention for use in patients with renal impairment were selected. We extracted “the information on renal function” described in the package inserts of these 337 prescription drugs from the website of Pharmaceuticals and Medical Devices Agency. We compared the contents of the information regarding the pharmacokinetics of patients with renal impairment described in the package insert with those described in the corresponding interview form. In 44.8% of the 337 package inserts, information on pharmacokinetics in patients with renal impairment was not included. Only 21.2% of the inserts contained useful information on drug administration to such patients, such as clear dose adjustment. Therefore, our survey suggests that the package inserts do not provide sufficient information on “renal function” for medical workers. In conclusion, improvement of the information regarding “renal function” in the prescription drug package inserts is necessary in order to meet the needs of medical workers. (Jpn J Clin Pharmacol Ther 2013; 44(4): 313-318)
著者
小林 江梨子 池下 暁人 孫 尚孝 櫻田 大也 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.141-150, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
9

後発医薬品への 「変更不可処方せん」 について調査を行った. 2018年7〜8月の任意の1週間における, 一般社団法人日本保険薬局協会の会員薬局2,667薬局で受けつけた全処方せん945,668枚のうち, 変更不可処方せんは103,378枚 (10.93%) であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合は, 5%以下の薬局が46.38%と最も多く, つづいて0%の薬局が17.51%であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合の平均値は10.22%であるが, 中央値は2.74%であり, 半数以上の薬局で, 変更不可処方せんの割合が2〜3%程度である一方で, 変更不可処方せんの割合の大きい薬局も存在する等, 薬局間でばらつきが大きいことが示された. 九州・沖縄地方では, 中央値が0.70%で最も小さく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局が, 75%以上を占めていた. 北海道地方では, 平均値が12.9%で最も大きく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局の割合は, 最も少なく, 61.5%に過ぎなかった. 平均値は地域によって異なっており, 北海道地方, 中部地方, 近畿地方, 四国地方で10%以上となっていた. 後発医薬品へ変更可能な処方せんにおいて, 後発医薬品へ変更しない主な理由は, 94.94%の薬局が指摘した “患者の意向” であった. そのほかの具体的な理由 (記述式) のうち, 最も多かったのは, 処方元からの口頭などによる指示であった. 過半数の薬局において変更不可処方せんの割合が小さい一方で, 変更不可処方せんの割合が大きい薬局も存在することから, このような薬局に焦点を当てた政策も必要である. 今後は, さまざまな特性の薬局を含めた調査が必要である.