著者
中山 次久 小森 学 高柳 博久 米本 友明 松脇 由典
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.82-91, 2008 (Released:2009-09-17)
参考文献数
25
被引用文献数
2

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (AFRS) は真菌に対するI型・III型アレルギーにより発症し, 副鼻腔粘膜や鼻茸中に著明な好酸球の浸潤をきたす再発率の高い難治性鼻副鼻腔炎である。欧米ではAFRSの頻度は慢性鼻副鼻腔炎と診断され手術に至った症例のうち4~10%程度と報告されているが, 本邦では現在のところ多くが症例報告であり, 有病率に関しての検討は松脇らの3.9%との報告にとどまっている。そこで本邦におけるAFRSの有病率を調査するため, 2006年4月から2007年3月までに富士市立中央病院を受診し, 鼻副鼻腔炎の診断をもとに内視鏡下鼻内手術を施行した症例を対象として検討を行った。対象症例は50症例で, 米国アレルギー喘息免疫学会 (AAAAI) 等の定めた鼻副鼻腔炎に対するガイドラインの分類にのっとり診断した。診断結果は急性化膿性鼻副鼻腔炎 (ABRS): 2例, 鼻茸を伴わない慢性鼻副鼻腔炎 (CRSsNP): 19例, 鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎 (CRSwNP): 25例, AFRS: 4例であった。また, 50例中真菌性鼻副鼻腔炎は11例で認め, 慢性非浸潤性 (sinus mycetoma): 7例, AFRS: 4例であった。以上よりAFRSは手術に至った慢性鼻副鼻腔炎48例中8.3%で認められた。本邦においても欧米とほぼ同等の頻度でAFRS症例が存在することが確認され, 今まで難治性鼻副鼻腔炎として治療を行っていた症例の中にAFRS症例が存在する可能性が示唆された。