著者
藤井 可絵 守本 倫子 小森 学 吉浜 圭祐
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.336-343, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
14

当院にて手術加療を行った先天性後鼻孔閉鎖症19例について初回手術時期,ステント留置期間およびサイズ,再手術例についての検討を行った。初回手術年齢平均は両側閉鎖例で生後4か月,片側閉鎖例では5歳3か月と,両側閉鎖例で有意に低年齢での手術を受けていた。ステントの平均留置期間は,両側閉鎖例と片側閉鎖例での比較,および初回手術後開存した例と術後狭窄あるいは閉鎖した症例で比較した結果,有意差はなかったが,ステント径は両側閉鎖例では有意に小さいサイズを選択しており,初回手術年齢が低年齢であることと関連している。再手術した8例中7例は最終的に開存しており,成長と共に鼻腔が拡大することで手術方法やステント径も選択できる事が良好な結果につながると考えられ,症例に応じた手術計画を立てる必要があると考えられた。
著者
中山 次久 小森 学 高柳 博久 米本 友明 松脇 由典
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.82-91, 2008 (Released:2009-09-17)
参考文献数
25
被引用文献数
2

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (AFRS) は真菌に対するI型・III型アレルギーにより発症し, 副鼻腔粘膜や鼻茸中に著明な好酸球の浸潤をきたす再発率の高い難治性鼻副鼻腔炎である。欧米ではAFRSの頻度は慢性鼻副鼻腔炎と診断され手術に至った症例のうち4~10%程度と報告されているが, 本邦では現在のところ多くが症例報告であり, 有病率に関しての検討は松脇らの3.9%との報告にとどまっている。そこで本邦におけるAFRSの有病率を調査するため, 2006年4月から2007年3月までに富士市立中央病院を受診し, 鼻副鼻腔炎の診断をもとに内視鏡下鼻内手術を施行した症例を対象として検討を行った。対象症例は50症例で, 米国アレルギー喘息免疫学会 (AAAAI) 等の定めた鼻副鼻腔炎に対するガイドラインの分類にのっとり診断した。診断結果は急性化膿性鼻副鼻腔炎 (ABRS): 2例, 鼻茸を伴わない慢性鼻副鼻腔炎 (CRSsNP): 19例, 鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎 (CRSwNP): 25例, AFRS: 4例であった。また, 50例中真菌性鼻副鼻腔炎は11例で認め, 慢性非浸潤性 (sinus mycetoma): 7例, AFRS: 4例であった。以上よりAFRSは手術に至った慢性鼻副鼻腔炎48例中8.3%で認められた。本邦においても欧米とほぼ同等の頻度でAFRS症例が存在することが確認され, 今まで難治性鼻副鼻腔炎として治療を行っていた症例の中にAFRS症例が存在する可能性が示唆された。