著者
高柳 友紀
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

下垂体後葉ホルモンのオキシトシンとその受容体は、社会行動と親和行動に重要であることが示されている。オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスには母性行動低下が認められた。一方で幼若期のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、母親から隔離したときの超音波発声がほとんど認められなかった。これらの結果は母仔親和行動において、母仔共にオキシトシン受容体が重要な因子であることを示している。また一方で、仔の成長後の行動は幼若期に母親から受けた愛着行動に強く影響をうけることが知られている。そこで、本研究では(1)母仔愛着行動においてオキシトシン系が活性化される脳部位の同定を行うこと、(2)幼若期のオキシトシン系活性化が仔の将来の行動を形成するという仮説を検証することを目的とした。母性行動誘発時にオキシトシン系が機能する脳部位を明らかにする目的で、神経活動マーカーであるc-Fosの免疫組織化学による解析を行った。仔に曝露して母性行動誘発刺激を与えたオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、外側中隔野、内側視索前野における神経活動が野生型に比べて顕著に少なく、これが母性行動低下に影響していることが示唆された。また、母仔分離をして仔が母への求愛行動を示す時にオキシトシン系が機能する脳部位を同定する目的で、オキシトシンとc-Fosの二重免疫染色による解析を行った。母と同腹仔から隔離した生後七日目のC57BL/6Jマウスにおいて、視索上核で神経活動マーカー陽性のオキシトシン産生ニューロンが多い傾向が認められ、室傍核のオキシトシン産生ニューロンにその傾向は見られなかった。また、C57BL/6J仔マウスに対して出生日から生後5日目までオキシトシン受容体アンタゴニストを連続投与し、成熟後の行動を解析した。Vehicle投与群と比較して情動行動には差が見られなかったが、社会行動において差が認められた。