著者
酒井 昭 高樋 勇 渡辺 富夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.412-420, 1963-12-25

寒風害の原因を明らかにする目的で2年間にわたって, 支笏湖に面するアカエゾマツの植栽地で被害調査を行なうとともに, 現地および札幌で2,3の関連実験を行なった。1.寒風害のあらわれる時期は土壌の凍結開始時期, 凍結深度, 外気温, 風の強さ, 積雪量等によって異なるが, 害がもっとも進行するのは厳寒期である。2.アカエゾマツでは害は最初葉に現われ, 葉の色は濃緑色から黄緑色, ついで黄または黄褐色に変わる。葉の変化の度合がすすむにつれて落葉も著しくなる。苗の風のあたる側の枝の裏葉が最初に害を受ける。なお害の度合に対応して葉や枝の含有量が低下するが, 主幹, 根の含水量は著しい害を受けても正常なものとほとんど変らない。3.植栽地の被害調査の結果, 防風帯のない地区では大部分の苗木が枯れているが, 防風帯の風下の地区では害がほとんど認められない。また苗木が雪で埋まりやすい凹地では害が少なく突出部では害が著しい。4.葉や枝に流動パラフィンを塗布して水分の蒸散を抑えた苗では害が少なかった。以上の結果から寒風害は土壌凍結のため水分が地上部に補給されがたい状態にある苗が冬季間の風のために, 水をうばわれやすい葉, 頂芽, 側枝等が耐えうる限界を越えて脱水されるためにおこると考えられる。