著者
高橋 ひさ子
出版者
育英短期大学
雑誌
育英短期大学研究紀要 (ISSN:09143351)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-13, 2003-02-01

本稿は夏目漱石(1867-1916)の『三四郎』(1908)と西洋絵画との関係を探っている。漱石作品への視覚芸術の影響については近年さまざまな研究が行われているものの,『三四郎』へのシンボリズムのプログラム応用については,今なお十分な研究が行われていないのが現状である。本稿は,『三四郎』のヒロイン美禰子像形成への漱石のシンボリズムプログラムの応用を明らかにすることを主眼とし,漱石の西洋絵画への強い関心,ジャンーバプティスト・グルーズ(1725-1805)が描いた少女像と『三四郎』のヒロイン美禰子像との関連性,さらに典型的なシンボリストモチーフで描かれた女性像との近似性,そして作品へのシンボリズムプログラム応用へと漱石を導くこととなったシンボリズムに対する漱石の理解と共感についての四部構成で論じている。