著者
高橋 典史
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.953-974, 2009-12-30

近代以降、多くの日系宗教が海外布教を行ってきた。そこでは現地社会への定着だけでなく、出自国である日本との関係性をいかに定義していくのかも、重要な問題であったと考えられる。その一事例を提供するために、本稿では、一九世紀末から第二次世界大戦後の復興期までのハワイの日系仏教関係者の言説を取り上げて、ハワイ社会への定着過程にみられる故国と日系仏教をめぐるメンタリティの変遷を考察する。キリスト教勢力への対抗のため、一九世紀末からハワイ布教を開始した日系仏教は、二〇世紀前半の日米関係と排日論の悪化のなかで、日米の二つの国家に状況適合的に対応しながらハワイに定着していくことを志向していった。しかし、第二次世界大戦後は、日系アメリカ人のエスニシティと結びついたエスニック・チャーチとして存続していき、故国に関わる言説は減少していった。こうした定着のプロセスは、アメリカにおける他の移民たちの宗教と共通してはいるものの、故国との関係における日系仏教特有の性格も看過できない。
著者
高橋 典史 Takahashi Norihito タカハシ ノリヒト
出版者
「宗教と社会貢献」研究会
雑誌
宗教と社会貢献 (ISSN:21856869)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-25, 2014-04

ベトナム戦争の終結後、ボート・ピープルなどの多くの難民がインドシナ半島から流出した。西側諸国の一員として難民受け入れを進めた日本において、民間組織のなかで主としてそれに協力したのが宗教系組織であった。本稿では、立正佼成会という新宗教教団による活動の実態を明らかにしただけでなく、教団が当該の事業に着手し、20 年近く活動を持続しえた要因として、その開始時期が教団の積極的な社会参加の展開期と重なっており、さらには事業のキーパーソンが継続的に活動に関与していたといった点を指摘した。こうした難民支援事業は、現代日本の移民(ニューカマー)と宗教との関わりについての研究において それほど注目されてこなかった対象であるため、本稿は研究の間隙を埋める意義も有している。