著者
下東 艶子 高橋 惇子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.670-680, 1982

各項目80問の回答結果の評価を, 度数分布表から考察したところ, 一般的主婦の家庭経営の盲点が浮かび上がり, 経営能力としては計画性の乏しさ等が如実に指摘された.一方, 家族の協力性は欠如しており, 主婦が, 今後発展するためにも, 明るく, 充実した家庭の経営のためにも, これらは十分改善されなければならない.<BR>また, 評価不可能と思われた「家庭生活の健全度測定」に, PR順位法を適用して個々の家庭の診断が可能になったことや, 基準尺度のPR換算表を作成することができたのは随時, 健全度を測定する場合に利用できるので便利であり, 閉鎖的・主観的評価を少しでも客観化へ導くことができたと考える.<BR>この調査票は筆者らとしては, 研究して作成したものであるが, 次のようなことでは, 表現が適切でなかったり, 一方的な解釈もあったように思う.家族の好きな食品を選ぶか…という表現, 漢方薬の利用をいけないとしたことや, 社会環境であまりに便利性を重視していることなどである.
著者
高橋 惇子 下東 艶子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.125-128, 1983

家庭生活の健全度を8項目, 80問から分析して診断したが, それぞれは密接不離の深い関係があり, お互いに影響し合い, 競合し合うのが, 実生活の現象である.<BR>筆者らは, その関係を, 上述のように平均値 (50PR) 以上の上位群と以下の下位群に区別して, ある項目にすぐれている家庭はその他の項目ではいずれがすぐれているかなどを調べた.さらに相関係数を算出して, 項目間の相関をみた。その結果, 両者から期せずして同一の傾向を把握したことは興味をさそった。すなわち, 家族と教育, 教育と食生活, 教育と衣生活, 衣生活と食生活の4組合わせは相関係数からも, また上下群の差からみても顕著で, 同じ関連性が発見できたのである。<BR>筆者らは, 経済・健康はいずれのアイテムとも強い相関があり, また, ダイア・グラムに隣接した各領域はそれぞれ関連の深いものとして設定したが, 今回の結果では健康と食生活, 環境と経済, 経済と教育はほとんど相関がない結果となった。しかし他は仮説どおりの結果を得たのである.<BR>本研究の結果から, 家庭経営に対して, 生活領域の関連に対する一側面を発見した.これは, 松島らによる家庭の生活系 (人間と環境の関係) の関係図, つまり, 家庭生活の主体となる家族と生活手段となる食物・被服・住居 (物的資源) が表出的な軸となり, 目標は家族の決めた目標に向かいながら, 家族・個人の成長・発達が家庭経営の終局の圏標を図示している.そのなかで経済はすべてにかかわり, 環境は家庭生活をより押し上げる外的作用としてかかわり, 健康は個人・家族そのものと直接不離にあると考察できる関係図を一部裏づけたように思われる.<BR>すなわち, 本研究によると, 家族の幸福な家庭生活を維持するためには, 主婦は日常の家庭経営において, 家族生活と衣・食・住生活の運営や子女の教育の面を強調すべきであろうと考えられる.これらの5領域は家庭生活の健全度を支える基盤的役割を示すものと考えられる.<BR>その他の項目の環境・経済・健康は他の項目との相関が低くでたが, このことは, 環境は家庭生活の快適性を周辺から押し上げるものである関係から, 直接に家庭内の事象との関連が乏しく現れたものと思われる。また, 経済と健康については, 他の生活アイテムのなかに密着して, 最も強い相関があるべきと考えるが, 本調査では意外な結果となった.とくに, 経済に関しての測定の質問内容の設定の仕方に欠点があったと考える.<BR>したがって, 今回の質問ではこのような結果を生じたけれど, 質問内容の設定によっては今回と異なる相関を得るものと考えられる。<BR>今後の課題としては, アンケートに使用した「家庭生活の診断テスト」のに設けられた80問の個々の内容を検討し, 広く一艘の実生活に適切な質問であるか否かの検討をすることである.これは基礎的な問題である.そして, この筆者らの試案的診断テストが標準テストに高められ, 家庭生活の健全度を左右する要素を的確に明示し, 役立つものにしたい.