著者
安藤 朗 藤本 剛英 高橋 憲一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2983-2989, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

我々は腸内細菌を利用してさまざまな食物からエネルギーを獲得している.腸内細菌は糖吸収を促がすだけでなく,食物繊維を発酵して脂肪酸を誘導しこれらがエネルギーとして利用される.一方,腸内細菌の存在は複雑な免疫機構の発達を誘導した.腸管は生体内最大のリンパ装置とされ,ここでは腸内細菌や食物抗原に対する免疫誘導と寛容が巧妙にコントロールされ過剰な免疫応答による組織障害が未然に防がれている.このホメオスタシスの乱れが炎症性腸疾患の発症につながる.一方,機能性消化管障害は,腹痛と便通異常などの症状があるにもかかわらず消化管検査では症状の原因を特定できないことから,腸管運動の機能障害と内臓神経の知覚過敏に起因する疾患と考えられてきた.しかし,最近の研究から機能性消化管障害の病態にも腸内細菌叢の関与が示唆されている.ここでは,腸疾患と腸内細菌叢のかかわり,腸内細菌を標的とした治療の実際について解説した.