著者
高橋 磐郎 早迫亮一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.238-248, 1990-02-15
被引用文献数
1

オートマトンによる自己増殖器官の実現には多くの試みが行われている.基本的アイディアはNeumannによって そしてそれを引き継いだBurks らによって理論的には一応完成したと考えられる.またその改良なども多く報告されている.しかし実際に動作可能な実体として設計されたものは報告されていない.本論文では 2次元格子によるNeumannのモデルを3次元格子に拡張することにより オートマトンによる自己増殖器官の設計に成功したので その概要について報告する.Neumannのモデルは 2次元格子上における29種の状態のオートマトンによるものであるが 2次元格子上では混線なしに情報を交差させることが難しい.NeumannはCrossing Organ等を導入することによりそれを解決しようとしたが 膨大な容量が必要であり またきわめて複雑な同期操作を行わなければならなかった.われわれは 領域を3次元格子空間に拡張することにより その情報の交差の問題を解決した.そのため オートマトンの状態の種類は41種に増えたが 情報の交差は著しく簡単になった.その他いくつかの改良を加え 各機能における構造を極度に簡潔化したため オートマトンによる自己増殖器官が実現できた.われわれの作成した自己増殖器官は1O0x20Oの2層からなり おそらく最も簡単なものであろうと確信している.