著者
荒木 健治 高橋 祐治 桃内 佳雄 栃内 香次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.391-402, 1996-03-25
被引用文献数
19

我々は, 人間の言語および知識獲得能力の解明とその実現を目的として研究を行っている. このような研究はこれまでいくつか存在するが, 工学的に有効なシステムを完成するまでに至っていないのが現状である. また, 心理学の立場からの研究も存在するが, これらの研究は工学的にどう実現するかという問題は対象としていない. そこで, 本論文では, この言語および知識獲得能力を工学的に実現する一つの試みとして, 入力べた書き文とその漢字かな交じり文より帰納的に語の読みと表記を獲得し, その獲得状況および変換精度に基づく確実性の高い語より順に変換するという帰納的学習によるべた書き文のかな漢字変換手法を提案する. 本手法は辞書が空の状態からでも学習機能により語を獲得することができるので, 辞書を個人ごとに自動的に作成することが可能, 個人用辞書とすることにより辞書容量を少なくできる, 未登録語の自動登録が可能, 初期辞書作成の労力を回避できるという利点がある. 本論文では, 更に本手法に基づく実験システムを作成し, 異なる4分野の論文40編を用いて本手法の学習機能による適応性能を確認するための実験を行った. 実験の結果, 4分野すべてにおいて90%以上の精度が得られ, べた書き文のかな漢字変換における本手法の有効性が確認された.