著者
高橋 行雄
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.14-22, 2014-06-30 (Released:2014-08-13)
参考文献数
7
被引用文献数
5

副作用自発報告は,実際に臨床現場において副作用と認識された事象の一部しか報告されないこと,またその割合がさまざまな要因で変動するといった報告バイアスが存在すること,発生頻度が求められず一般的な副作用発現の評価手法が適応できないという問題が知られている.そのため,シグナル検出という探索的な解析法が確立されてきた.(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医薬品副作用データベース(JADER)が, 2012年4月に公開され,誰でも制約なしに使えるようになった.本データベースの活用により,薬剤疫学研究の質が向上することが期待されている.しかしながら,活用方法としては「シグナル検出」に注目されがちであり,その結果,規制当局が対応すべき課題と認識され,製薬企業などでの活用事例の報告は少ないのが現状である.筆者ら第2期医薬安全性研究会薬剤疫学グループは,JADER 公開以前から網羅的ではないが,PMDA が提供している「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索」で得られたリストを取りまとめてデータベース化し,薬剤疫学の検討方法を参考に製薬企業の中での活用を試みてきた.その後,JADER を用いて一般的な PC でも可能なシグナル検出のための統計量を容易に算出するための方法を考案し,各種の課題に応用を試みてきた.本論文では,シグナル検出を可能にするための JADER の処理方法について解説する.この方法を用いて,多くの薬剤疫学の課題に対する応用が活発に行われ,薬剤疫学研究の質の向上に寄与することを期待する.
著者
高橋 行雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.6, pp.325-331, 2009 (Released:2009-06-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3

薬理学研究から得られる経時データに対して,様々な統計手法が適用されている.しかし,適切な統計解析法なのかが明確にされていないために,反復測定分散分析(Repeated measures ANOVA)を行い,薬剤因子と時間因子の交互作用に有意な差があれば,時点ごとに多重比較法により輪切り的に群間の平均値を比較する方法が標準的になっている.今回,経時的に測定された血圧データを用いて,降圧剤の薬効評価の観点からその問題点について検討した.反復測定分散分析において,投与前値を含む実データを使うか,投与前値からの差のデータを使うかによって分散分析表の見方が全く異なることを示した.経時データのエンドポイントとして,1)効果が最大となる時点,2)曲線下面積,3)薬効の発現時点,4)投与前値までの回復を取り上げ,設定のための着眼点について例示した.投与前値をどのように考慮するかについて,1)投与開始後のデータのみを用いた方がよい場合,2)投与前値を共変量としてよい場合,共変量としてはならない場合に分けて述べた.投与中止後の投与前値への血圧の回復を判定する場合には,有意差検定より差の信頼区間を用いる方が望ましいことを例示した.