著者
高津 裕通
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

太陽面における様々な活動現象は、太陽磁力線の繋ぎ変えをきっかけとして、磁場に蓄えられたエネルギーが開放される高温プラズマ現象であると考えられている。フレア等の質量放出現象により太陽から宇宙空間へ飛び出たプラズマは、磁気嵐を発生させることがある。磁気嵐は、電波障害を起こし、人工衛星の軌道に影響を与えることもある。また、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士や北極圏航路を飛行する航空機乗務員の、宇宙線による被爆にも関係している。フレアの発生を予報することができれば、これらの影響を最小限に抑えることができると期待されている。このように、太陽フレア等の発生メカニズムを解明することは、純粋学問上の意義だけでなく、我々の生活にも密接に関係した意義を持っている。しかしながら、太陽活動現象の発生メカニズムは未だ解明されておらず、さらなる研究が必要とされている。太陽フレア等の活動現象は、磁場の活動によるものであるが、そもそも太陽磁場は、太陽内部の対流層で作られる。この磁場が対流層を通り、太陽表面まで浮上することで、様々な活動を引き起こすことができる。我々は、この浮上磁場領域における対流構造を研究することで、太陽活動の素過程の解明に取り組んでいる。今年度は、昨年度に引き続き、京都大学飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡を使い、太陽活動領域の可視光観測を実施した。観測結果は、主にDVDディスクに保存された。解析結果として浮上磁場領域における発散対流構造が得られており、成果発表の準備中である。また同時に、ドームレス太陽望遠鏡主焦点での撮像装置の改良を行った。これにより、観測精度が向上した。また、スペインのラパルマ天文台で観測された高分解画像の解析を行い、その過程で解析方法の精度向上のために必要な誤差の見積もり方法を開発した。これらの結果は、日本天文学会秋季年会で発表され、論文として投稿準備中である。