著者
小林 渓太 高瀬 和也 塩田 真吾
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.259-267, 2021-06-28 (Released:2022-06-28)
参考文献数
12

情報モラル教育は中学校技術・家庭科の技術分野においても多様な取り組みが行われてきたが,「良い」「悪い」のケーススタディによる教材を用いた指導も多く,倫理観の観点からみると生徒自身に自分事としての自覚が生まれにくいため効果が十分ではなかった。そこで本研究では,道徳教育との連携を見据え,中学校技術・家庭科技術分野において,生徒の「自覚」を促し,倫理観の育成を目指した教材を開発した。「良い」「悪い」という二者択一的な指導ではなく,著作権をテーマに,答えのない判断に迷う社会的事例を扱った読み物教材の開発を試みた。中学校2年生を対象に1コマの授業を実践し,道徳性の評価も踏まえつつ倫理観の観点から開発した教材の評価を行った。授業の事前と事後で比較したところ,道徳性の評価の観点のうち道徳的判断力,道徳的実践意欲と態度,について有意差が見られた。倫理観の評価の観点である道徳としての問題を考え続ける姿勢,についても有意差が見られ,自由記述によるテキストマイニングからも倫理観の向上に繋がる一定の効果が確認できた。