著者
井手 広康 奥田 隆史
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.269-278, 2021-06-28 (Released:2022-06-28)
参考文献数
10

2019年に改訂された高等学校学習指導要領において,文部科学省は授業で取り扱うプログラミング言語を指定していないが,高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修教材においてPythonのプログラムを例示している。ただし,Pythonにはさまざまなプログラミング環境が存在するが,プログラミング言語と同様にプログラミング環境についても指定していない。そこで,本研究では,高等学校のプログラミング教育において,プログラミング環境の違いによって生じる教育効果の違いを比較することを目的とし,7つのクラスに対してそれぞれ異なるPythonのプログラミング環境を用いて同一の授業を行った。ARCS評価シート,事前・事後アンケート,確認テストの結果から,プログラミング環境のうちTextFile形式のものに良い結果が表れる傾向があり,特にJupyter Lab (TextFile)とSpyderが他のプログラミング環境と比較して高い教育効果が期待できることがわかった。
著者
磯部 征尊 宮川 秀俊 村松 庄太朗
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-8, 2017-03-30 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26

本研究は,実際の中学校技術科教育における安全管理と安全指導に着目し,「教室環境」および「施設・設備」等に関する現状と課題について検討することを目的にしている。ここでは,愛知県内の中学校から無作為に抽出した100校を対象として,技術科教育における安全管理と安全指導に関する状況把握調査を行った。その結果,授業者自身が授業中に危険ととらえる作業や場所は,「道具・工具(27件)」が最も多く,「作業環境に関する内容(12件)」が2番目に多かった。また,生徒が取り扱うには危険だと思われる道具や機械に関しては,「電動機器(50件)」が最も多いことが分かった。一方,実際の授業の中で危険だと感じた場面は,「道具・工具(19件)」が最も多いことが分かった。
著者
嶋 崇志 改正 清広
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.147-155, 2019-06-28 (Released:2020-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

LEDは製造段階で個体ごとのV F −I F特性にばらつきが生じる。これは,輝度のばらつきや定格を超えた不適切な利用に直結するため,LEDを駆動する際には電圧ではなく電流による制御が必須である。本稿では,発振型昇圧回路の一種であるジュールシーフ回路をパルス電流源のように利用できることを提案する。コイルの充放電特性とトランジスタの各種特性に着目した動作分析からジュールシーフ回路におけるパルス電流源的動作を明らかにし,LEDを利用した動作確認と評価を行った。その結果,高輝度赤色LEDを1~6個に変化したときのピーク電流値の変化が23.6mA±2%という高い安定性であった。これにより,ジュールシーフ回路によるLED駆動回路設計の簡易化を実現し,その有用性を示した。
著者
石橋 政紀 中村 光 東原 貴志 樋口 雅樹 梅村 研二
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.197-203, 2016-12-28 (Released:2019-12-30)
参考文献数
11

本研究では,クエン酸とスクロースの混合物を接着剤として使用したパーティクルボードを製造し性質を評価するとともに,クランプとオーブンを用いた木質成形体の簡便な製造方法を開発した。その結果,曲げ強さは11.4~16.1MPaを示し,ポリエチレンを接着剤として使用したパーティクルボードと比較して大きいことや,4時間煮沸した後の厚さ方向の寸法変化が小さいことを明らかにした。中学生を対象としたパーティクルボード製造の授業実践を行った結果,木質材料の製造法を学習することは木材と木質材料の性質を理解する上で有効であると考えられた。また,新たに開発した木質成形体の製造方法では成形作業が簡易化されており,教材として有望であると考えられた。
著者
小林 渓太 高瀬 和也 塩田 真吾
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.259-267, 2021-06-28 (Released:2022-06-28)
参考文献数
12

情報モラル教育は中学校技術・家庭科の技術分野においても多様な取り組みが行われてきたが,「良い」「悪い」のケーススタディによる教材を用いた指導も多く,倫理観の観点からみると生徒自身に自分事としての自覚が生まれにくいため効果が十分ではなかった。そこで本研究では,道徳教育との連携を見据え,中学校技術・家庭科技術分野において,生徒の「自覚」を促し,倫理観の育成を目指した教材を開発した。「良い」「悪い」という二者択一的な指導ではなく,著作権をテーマに,答えのない判断に迷う社会的事例を扱った読み物教材の開発を試みた。中学校2年生を対象に1コマの授業を実践し,道徳性の評価も踏まえつつ倫理観の観点から開発した教材の評価を行った。授業の事前と事後で比較したところ,道徳性の評価の観点のうち道徳的判断力,道徳的実践意欲と態度,について有意差が見られた。倫理観の評価の観点である道徳としての問題を考え続ける姿勢,についても有意差が見られ,自由記述によるテキストマイニングからも倫理観の向上に繋がる一定の効果が確認できた。
著者
市川 太智 鄭 基浩
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.179-185, 2017-09-30 (Released:2019-12-27)
参考文献数
12

木材はストローを束ねたような多孔質の構造であり,スギのような低比重材は空隙率が高いことから,繊維飽和点から2倍以上の重量の水を保持できる。また,液体注入メカニズムにより仮道管内部への塩分の注入が簡単にでき,かつ,表面張力と毛細管現象により長期間の水の保持も可能である。この特徴に着目し,木材を化学電池の容器に用いる事で,非常用の電源として活用可能な複合型教材を提案することを本研究の最終目的とした。そこで,電極として銅板と亜鉛板を,電解液として食塩水を用いた木電池を開発し,教材化にむけて最適発電条件の究明と教材開発を行った。その結果,木電池は電圧が約770mVで20日以上も発電し6 個直列にすることでLEDの点灯も可能であった。また,教材例として提案した1石トランジスタAMラジオは長時間木電池で駆動でき,かつ良い受信性能から教材として高い可能性を示唆した。
著者
山尾 英一 森山 潤
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:02865580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.223-231, 2016

<p>本研究の目的は,工業高校生の在籍時における職業に対する自己効力感の就職後の変容について事例検討することである。大阪市内のA工業高校工業化学科の卒業生15名(男子13名,女子2名)を対象に,卒業目前となる3月から就職後5ヶ月以上経過した8月から10月に個別面談による半構造化面接及び「工業高校生の職業に対する自己効力感尺度」11項目の調査を実施した。その結果,卒業生の「適応資質効力感」及び「専門性効力感」は,業種を問わず在籍時よりも実際の職業生活を経験しながら,なお維持・向上していく傾向が示唆された。また,就職後の「専門性効力感」の向上要因は,関連業種就職群では習得した知識,技能,資格の直接的な活用経験,非関連就職群では実践的な学習経験による自律性や忍耐強さ,責任感の強さなど汎用的な職務能力を発揮した経験によるものと推察された。</p>
著者
吉原 和明 井口 信和 渡辺 健次
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.73-80, 2018-06-30 (Released:2019-12-24)
参考文献数
12

本研究では,物理的可視化や物理的直接操作によるネットワーク学習教材を開発し,教材を用いた授業実践を実施し,事前・事後テストとアンケート結果をもとに教材の有効性を確かめた。本教材を用いることによって,現状では見ることのできないネットワーク技術を,LED を用いて物理的可視化し,ダイヤルやボタンを用いて物理的直接操作することで,直感的にネットワークの機能や動作を理解することができ,IP アドレスの仕組みを効果的に学習できることが確認できた。ネットワークの学習の問題点に,実験や実習を行うことが難しいことがある。加えて,ネットワークそのものが利用者の目に触れないところで働いているため,動作を直接見ることができないことも,学習を難しくしている。そこで本研究では,ネットワークの動作をLED の点灯により,物理的に可視化し,ボタンやダイヤルで物理的に直接操作することで,実際にネットワークの構築を通してIP アドレスの仕組みを学習するための教材を開発した。中学校1 年生を対象に教材を用いた授業実践を行い,教材の評価を行った。授業対象者を実験群と統制群に分け,事前テスト・事後テストを行った結果,事後テストでは,実験群の方が統制群より得点が高い傾向にあり,有意差が見られたことから,教材の有効性が確認できた。