著者
高瀬 裕志
出版者
日本歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

放射線治療において、歯科金属補綴物が口腔内に装着されていると、補綴物と隣接する口腔粘膜の放射線吸収線量が増加するため、金属補綴物は放射線粘膜炎の増悪因子として重要である。今回の検討では、歯科金属補綴物の有無により口腔粘膜部の吸収線量がどの程度変化するか(後方散乱電子の影響)について基礎的な実験を行った。1.データ分析システムの構築歯科金属補綴物の組成データ、照射データ(照射野、線量など)、線量分布データ等を一括して管理し、テ-タ処理を行うためのシステムを構築した。2.実験用簡易固定具の作製CTならびに放射線治療装置(2.8MV LINAC)の両者において照射野の再現性が得られるようにするため、ウレタンとアクリル樹脂を用いて、ファントム固定用の簡易固定具を作製した。3.ファントム実験軟部組織等物質(Mix-DP)を用いて作製したファントム中に、金銀パラジウム、ニッケルクロム合金、アルミニウムをそれぞれ挿入し、金属の厚みと照射野を変化させて、放射線(2.8MV X線)を照射した。金属が存在しない場合の金属相当部の吸収線量は、同ファントムをCT撮影して治療計画装置(TOSPLAN)から求め、また、金属が存在する場合の金属後方部の吸収線量(照射側の対側)はフィルム法により測定した。結果と今後の展望金属後方部の吸収線量は、金属がなく軟部組織のみの場合と比べ著明に増加し(金パラで約1.4倍)、原子番号の高い金属ほど増加する傾向が示された。また、金属が厚くなると吸収線量は増加するが、一定値以上では大きく変化しないことが確かめられた。今後は、金属が存在する場合の吸収線量増加に対する軽減法について、さらに検討を加えたい。