著者
佐藤 勉 田中 とも子
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

水道水のフッ化物濃度調整(fluoridation)があり、公衆衛生学上優れたう蝕予防法である。わが国においても、地域住民の合意等を前提にfluoridationの実施が可能となった(2000年、厚生労働省)。国内では安全な水の供給に関心が高まっており、浄水器を設置する家庭が増加している。したがってfluoridationが実施された場合、浄水器通過後のフッ素(F)濃度を検討する必要がある。本研究では家庭用浄水器に多く使用されている2種類の濾材を用いて浄水装置を作製し、F濃度に及ぼす影響を検討した。家庭用浄水器の濾材として用いられている活性炭フィルターと中空糸膜フィルターを用いて、簡易浄水装置を作製した。NaFを純水および水道水に添加し、種々のF濃度(0.1〜10mg/L)の試験溶液を調製した。ついで浄水装置通過後の試験溶液とフィルター中のフッ素濃度を測定した。活性炭フィルターを用いた浄水装置通過後のF濃度は、すべての試験溶液で通過量10Lまでは通過前のおよそ1/10の濃度であった。その後通過量が多くなるにしたがって、F濃度は上昇した。中空糸膜フィルターを用いた浄水装置では通過前後のF濃度に変化がみられなかった。実験終了後の活性炭フィルター中に高濃度のFが含まれていた。以上より、活性炭フィルターを使用した家庭用浄水器はfluoridation後の水道水中のF濃度に影響を及ぼすことが明らかになった。従って、fluoridationによるう蝕予防効果を確実にするためには、使用する浄水器の種類を考慮する必要があることが明らかにされた。なお、F以外の陰・陽イオンについては、Cl、MgとCaは活性炭フィルターと中空糸膜フィルターに吸着されることが示された。その他のイオンについては明確な結果が得られなかった。
著者
中原 貴 望月 真衣 小林 朋子 相良 洋 中島 慎太郎
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、現代の歯科インプラント治療で使用されるチタン製人工歯根に代わり、歯周組織を備えたバイオ再生歯根の創製を目的とする。すなわち、我々が開発した“歯根・歯周組織ユニット”の体外再生を可能とする新規培養システム「器官再生法」を駆使し、同ユニットの再生能を有する歯性細胞群「Regenerative(Reg)細胞群」の同定、および同定したReg細胞群が担う再生誘導因子の特定をめざす。本研究は、普遍的な器官再生法の確立と再生誘導医薬の創出により、真に臨床応用できる歯の再生である『再生歯インプラント』の実現を最終目標とした基盤研究である。
著者
阿部 邦昭
出版者
日本歯科大学
雑誌
日本歯科大学紀要. 一般教育系 = Bulletin of the Nippon Dental University. General education (ISSN:03851605)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.7-12, 2012-03-20

We analyzed initial waves of the 2010 Bonin Island tsunami which was recorded at tide stations in Japan. After reducing tidal level from the record we identified the initial wave and determined the arrival time, polarity, double amplitude and period. The amplitude, normalized at 1000 km in the epicentral distance in the assumption of geometrical spreading, was plotted to the period relative to dominant period of seiche. The resonance curve represents itself having the maximum at 1.4. Thus it is concluded that the initial wave follows a law of resonance. It suggests that the initial wave is amplified by the background oscillation.
著者
小林 雅之
出版者
日本歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

【被験者】日本歯科大学新潟歯学部附属病院小児歯科に来院した,年齢5歳3か月から11歳9か月の小児小児患者19名。【実験方法】治療椅子を中心とした時計式表示法の位置で12時に歯科医師,3時に歯科衛生士,7時半に母親を配置した。そして,歯科医師が「おくちをあいて」,母親が「いいこにしてね」,歯科衛生士が「がんばったね」と話しかけ,被験児の眼球運動を両眼眼球運動測定装置で測定した。分析の結果,三者が話しかけたとき,話しかけた人の顔を視線が走査した被験児(走査群)と,走査しなかった被験児(非走査群)とに二分することができた。そして,両者間に性格特性があるか検討するため,被験児の眼球運動の結果と高木・坂本幼児児童性格診断検査との関連を,林式数量化理論II類により比較検討した。【結果および考察】1.数量化II類の結果は,相関比が0.701,判別的中率が94.7%,判別的中点が-0.127であった。2.高木・坂本幼児児童性格診断検査の性格特性で,走査群と非走査群の判別に大きな影響を与えるアイテムは,自制力,顕示性,神経質そして学校への適応であった。走査群に判別できるカテゴリーは,自制力なし,顕示性なし,神経質傾向,学校へ適応で,非走査群に判別できるカテゴリーは,自制力あり,顕示性あり,神経質でない,学校へ不適応であった。3.性格特性で,アイテム間相互の偏相関係数が0.700以上の強い相関を示すアイテムは,顕示性と神経質,神経質と自主性,不安傾向と社会性,自制力と個人的安定性であった。以上より,走査群と非走査群の被験児間に性格特性があることがわかった。
著者
福田 雅臣
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は「食育」を歯科保健の立場,特に歯・口の機能という視点から,食育支援のための授業プログラムの作成と実践活動を小学校において,学校保健教育の中で行い,その効果として児童の行動変容を評価することを研究目的とするものである。調査対象は小学校3年生から6年生の男子1545名,女子1456名の計3001名である。健康教育の効果は生活習慣,食習慣の関するセルフチェックシートを用いて行った。その結果,生活習慣,口腔衛生習慣に関す項目で僅かではあるが改善傾向にあることがわかった。また,むし歯予防のための行動として,「歯磨きをする」,「よくかんで食べる」,「フッ素入り歯磨き粉を使う」との回答が多かった。
著者
佐藤 格夫
出版者
日本歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

咬合様式の違いによる義歯床への影響を検索するため下顎義歯床の歪みを測定するには、床の形態,床の厚さ等の条件を被験義歯間において一定にすることが難しかったため、レデュースドオクルージョン,リンガライズドオクルージョン,フルバランスドオクルージョンの咬合を付与するために用いられるコンデュロフォーム,リンガライズド人工歯,リブデントFB20の各種人工歯における上下右側第一大臼歯を用いて、疑似モデルを作製して応力分析を行った。上顎人工歯は定荷重圧縮試験器に、下顎人工歯はアクリル板にそれぞれ即時重合レジンにて取り付けた。アクリル板の頬舌側相当部には歪みゲージを取り付け、上顎人工歯を2Kgの荷重で高さ3cmから落下させたときのアクリル板に及ぼす応力を繰り返し3回にて測定した。上下人工歯が嵌合した状態を基準として、咬合面に疑似食品としてオクル-ザルインディケ-ティングワックス1枚を介在させ3種類の咬合様式について歪みを測定した。疑似モデルのアクリル板に及ぼす影響は、義歯床にも同様に加わるものと考えられる。また、その違いによって義歯の有用性の評価につながる1要因となる。各種咬合様式における歪み量は、フルバランスドオクルージョンが最も大きく、ついで、リンガライズドオクルージョン、レデュースドオクルージョンの順となった。疑似食品としてワックスのみを用いたため、食品のもつ種々の性質は網羅できていないと思われ、この面から明らかでない部分もあると考えられるが、3種類の咬合様式で義歯床に及ぼす影響はレデュースドオクルージョンが最も小さいと推察される。
著者
猪子 芳美 河野 正己 清水 公夫
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

「研究の目的」睡眠中、舌筋(特にオトガイ舌筋)が弛緩することで舌根沈下が起き、睡眠時無呼吸のトリガーとなることが知られている。本研究は、覚醒時のオトガイ舌筋をトレーニングで強化させることで、睡眠中の筋弛緩を減じ、無呼吸の発生を抑制させることによって睡眠時無呼吸の重症度を減少させる新たな治療方法の構築および臨床への応用を目指す。「研究実績」①舌の筋力測定と分析:夜間のいびきや日中の眠気から睡眠外来に睡眠時無呼吸を疑い来院した患者に対して研究の協力を依頼し、舌圧測定器を用いて舌の筋力計測を行なった。その後、終夜睡眠ポリグラフ検査を行なった。舌圧(舌の筋力)と睡眠時無呼吸の重症度の解析を行ない、舌筋のトレーニングが必要な対象者の選択を行なった。②舌筋のトレーニング:舌圧値(舌の筋力)が健常者に比べて低下し、睡眠時無呼吸の検査データとの関係から舌の筋肉トレーニングが必要と思われる対象者に対し、研究の必要性を説明し、同意を得られた者について研究を継続した。トレーニング前のデータ収集としてウオッチパッドを用い、睡眠の簡易検査を施行することによってトレーニング前の状態を把握した。その後、対象者の筋力に応じて、適切な舌トレーニング器具(ペコパンダ)を選択し、ペコパンダを用いた毎日のトレーニングを開始した。トレーニング後に再度、ウオッチパッドを用いて睡眠の簡易検査を行い、トレーニングの成果を評価し、その結果について国内外学会において発表を行い、研究論文の投稿を行う。
著者
岡村 弘行
出版者
日本歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

チタンは融点が高く高温においての活性化エネルギーが非常に高いので石膏系埋没材やりん酸塩系埋没材が含有するシリカと非常に反応しやすい。その上,現在チタン系埋没材の主材として用いられているZnO_2,Al_2O_3,Mg等もシリカより反応が少ない骨材として良好な鋳造表面を得るために使用されているが鋳造した鋳造体の品質が均一でなく優れたチタンの特性が生かされていないようである。今回,高温で安定な高純度(100%)酸化イットリウム粒子の4μと20μとの2種を水,ジルコニアゾル溶液で練和し混液比の決定を行った。その結果,水での練和は埋没材の表面に30分後に割れが生じた。しかし,ジリコニアゾル液の場合粉末50gに対し液20mlの比が最もよく練和しやすく割れはなかった。また,硬化は時間がかかるため60℃の恒温槽に1時間入れ硬化させた。硬化膨脹はレバ-タイプ電気マイクロメーターを使用し水銀浴上で無荷重の状態で行った結果60分で収縮があることがわかった。また,粒子の大きい方が小さい方より収縮は小さかった。このため粒子の配合比を変えることにより改良されることがわかった。熱膨脹でも硬化膨脹と同じ傾向がみられるが,ジルコニアを5wt%添加することにより約1.2%の膨脹がが得られることがわかった。今回このように基礎的データーしか得られなかったがチタンを一部鋳造した結果,表面性状の非常に良好な鋳造体が得られた。さらにこれらの酸化物系列としてネオジウム,セリウムも高温埋没材として有望であることがわかった。
著者
岡 俊哉
出版者
日本歯科大学
雑誌
日本歯科大学紀要. 一般教育系 = Bulletin of the Nippon Dental University. General education (ISSN:03851605)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.5-12, 2019-03-30

A swelling similar to that of the human hypophysis occurs in the caudal spinal cord of teleost fish. This is referred to as the “urophysis” and forms the caudal neurosecretory system together with neurosecretory cells (Dahlgren cells) located upstream of the urophysis and the fiber path from the cells. The details of the function of this system is still unknown, and study of the urophysis in fishes has declined. Amazingly, it was found that urotensin II, a peptide hormone isolated and purified from the fish urophysis, was expressing also in humans, as a potent vasoconstrictor. Recently, research on peptide hormones isolated from the urophysis has been actively performed for development of new drugs for human medicine. In this paper, this elusive fish urophysis and the caudal neurosecretory system will be discussed, and a new idea regarding the function of this system will be proposed.
著者
新海 航一 海老原 隆 鈴木 雅也 加藤 千景
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Er,Cr:YSGGレーザーを用いた歯の切削は、微小水蒸気爆発により歯面が粉砕されて生じることを確認した。レーザー切削象牙質面には熱変性層が生成されるが、熱変性層はリン酸処理後に次亜塩素酸ナトリウム処理を行った場合に除去された。レーザー切削面にリン酸処理あるいはリン酸と次亜塩素酸ナトリウムの併用による前処理を行うと2ステップセルフエッチシステム(歯質接着システム)の単独処理より接着強さが向上した。
著者
中村 康則 青木 茂治
出版者
日本歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

口腔カンジダ症患者から分離したC.albicans K株の1×10^7〜4×10^7cellsを4週齢の雌雄SDラットに1回静脈接種することにより四肢に関節炎を発症せしめ、外観症状(腫脹,発赤,歩行異常)の経過を観察すると共に関節部骨の形態変化について検討した。1.経過観察:(1)発症率には性差はなく、接種菌量の増量にほぼ依存して発症頻度も高くなった。(2)発症の時期は菌接種後2〜4週に集中したが、2ケ月以降に遅発する例や再発例もあった。(3)発症部位は諸々の関節に及ぶが、中でも足根部,膝,助骨,肘の頻度が高かった。また、一個体で複数部位に発症する例が約4割あり、接種菌量が増量すると発症部位の総数も増加した。(4)外観症状の回復には平均2週間位を要したが、数日間の軽症例や長期間持続するものもいた。 2.骨形態変化:(1)関節炎部位の軟X線写真からは骨の膨隆,骨吸収斑の他、関節面の凹凸もみられた。骨吸収斑は未発症の骨にも同様にみられた。(2)それら部位のCMR写真からは軟X線所見を裏付ける骨造生像や骨吸収窩像の他、皮貭骨の菲薄化、骨梁の減少も観察された。この造生骨の形成過程を踵骨の例でみると、外観症状の出現から4日位で針状の未熟骨が部分形成され、その数日後には桿状骨となり骨辺縁を取巻いていた。この間に投与した硬組織時刻描記剤テトラサイクリンの骨蛍光分布は造生骨が顕著であり、石灰化が活発であることが示された。そして、この骨変化は外観症状が顕著なもの程、高度でかつ永続した。(3)病理組織標本からは旺盛な骨芽細胞が造骨している一方で、破骨細胞の出現による骨吸収窩像がみられたが、これらの所見は関節周囲の強裂な炎症に起因すると思われた。以上の成績から、本真菌によるラット関節炎は多発性であること、遅発や再発も起こること、骨に対しては新生骨の造生と骨吸収斑の変化が主であり、これらの骨病変は自然治癒しにくいことが示唆された。