- 著者
-
高田 昌幸
- 出版者
- 一般社団法人 日本外科感染症学会
- 雑誌
- 日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.6, pp.669-677, 2018-12-31 (Released:2019-04-20)
- 参考文献数
- 22
腎移植における周術期管理についてはいくつか気をつけなければならないことがあるが,以下の 3点はとくに注意が必要である。①免疫抑制療法下で行う手術である,②腎不全患者に対する手術である,③拒絶反応,である。免疫抑制剤を用いることで免疫機能が抑制されるため感染症には注意が必要である。一旦感染症が起こると重症化しやすく,拒絶反応を引き起こすこともあるため感染予防が大切である。ドナー,レシピエントとも術前に感染症のスクリーニング検査を行っておくこと,可能な限りワクチン接種を施行しておくことが有効である。腎不全患者は(とくに生体腎移植では)腎移植手術を受けた後,比較的早期から利尿がみられる。血圧などを中心とした全身管理や十分な補液で尿量を確保することが大切である。近年免疫抑制剤の進歩により急性拒絶反応は減った一方,免疫学的リスクの高い腎移植も行われるようになってきており拒絶反応は今でも腎移植手術の重要な課題の 1つである。周術期を無事乗り切ることが移植腎予後に大きく影響するため,免疫抑制療法下で不測の事態に対応できるように移植に特有な感染症や拒絶反応など合併症によく精通しておく必要がある。