著者
桐山 雅史 高田 晃彦 占部 美子 根本 紀夫
出版者
The Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.118-126, 1997-07-31 (Released:2009-09-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では,未変性卵白アルブミン(OVA)溶液および高温熱処理により作製したゲルについて示差走査熱量測定法(DSC)を用いて熱的特性を評価した。水溶媒中での未変性OVA試料において,OVA濃度Cの範囲が5~58wt%のとき変性温度td,エンタルピーΔHは各々,75.0℃,890kJ・mol-1の一定値を示した。一方,C > 58wt%ではOVA濃度の増加に伴いΔHの減少とtdの上昇がみられた。C=58wt%のとき水和された状態において最密充填状態になると仮定すると,OVA表面にOVA1gあたり0.36gの結合水が存在することがわかり,OVA分子を直径5.6nmの球とすると,このときの水和層の厚さは0.36nmと見積もられた。C≥10wt%以上のOVA水溶液では140℃付近,170℃付近,220℃付近に発熱ピークが存在し,それぞれrandom-aggregate状から安定なゲル構造への形態変化,S-S結合の切断,OVA自身の分解に対応するものであると思われる。また,円偏光二色性測定により約80℃でα-helixの含量が減少し,さらに高温でβ-sheet,β-turn含量も減少したことを明らかにした。この結果はOVAの2次構造の変化が100~140℃の温度範囲におけるゲル形成およびその後200℃で始まる分解以前にランダムコイル形態への形態変化に決定的な役割を果たしていることを示している。OVAの熱的挙動に対する溶媒の疎水性の効果を研究するため,グリセリンおよびエチレングリコールの2有機溶媒とこれらと水との混合溶媒を溶媒として用いた。混合溶媒の混合比に対するtd, ΔHの複雑な変化が観測され,エチレングリコールはグリセリンと比較して,未変性OVAに強く相互作用を及ぼすことがわかった。
著者
桐山 雅史 高田 晃彦 占部 美子 根本 紀夫
出版者
Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.118-126, 1997

本研究では,未変性卵白アルブミン(OVA)溶液および高温熱処理により作製したゲルについて示差走査熱量測定法(DSC)を用いて熱的特性を評価した。水溶媒中での未変性OVA試料において,OVA濃度Cの範囲が5~58wt%のとき変性温度<i>t</i><sub>d</sub>,エンタルピーΔ<i>H</i>は各々,75.0℃,890kJ・mol<sup>-1</sup>の一定値を示した。一方,C > 58wt%ではOVA濃度の増加に伴いΔ<i>H</i>の減少と<i>t</i><sub>d</sub>の上昇がみられた。<i>C</i>=58wt%のとき水和された状態において最密充填状態になると仮定すると,OVA表面にOVA1gあたり0.36gの結合水が存在することがわかり,OVA分子を直径5.6nmの球とすると,このときの水和層の厚さは0.36nmと見積もられた。<i>C</i>≥10wt%以上のOVA水溶液では140℃付近,170℃付近,220℃付近に発熱ピークが存在し,それぞれrandom-aggregate状から安定なゲル構造への形態変化,S-S結合の切断,OVA自身の分解に対応するものであると思われる。また,円偏光二色性測定により約80℃でα-helixの含量が減少し,さらに高温でβ-sheet,β-turn含量も減少したことを明らかにした。この結果はOVAの2次構造の変化が100~140℃の温度範囲におけるゲル形成およびその後200℃で始まる分解以前にランダムコイル形態への形態変化に決定的な役割を果たしていることを示している。OVAの熱的挙動に対する溶媒の疎水性の効果を研究するため,グリセリンおよびエチレングリコールの2有機溶媒とこれらと水との混合溶媒を溶媒として用いた。混合溶媒の混合比に対する<i>t</i><sub>d</sub>, Δ<i>H</i>の複雑な変化が観測され,エチレングリコールはグリセリンと比較して,未変性OVAに強く相互作用を及ぼすことがわかった。
著者
山岸 忠明 生越 友樹 高田 晃彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

両親媒性環状化合物を合成し、凝集状態に及ぼす分子構造の影響と環状化合物を用いた分子カプセルの形成および分子カプセルの3次元配列制御について検討した。両親媒性カリックスアレーンの場合、アルキル鎖長によって凝集状態が変化することおよび分子カプセルの形成には最適のアルキル鎖長があることを解明した。さらに、液晶性シクロデキストリン (LCCD)を合成し、液晶性を利用して分子カプセルを規則的に配列させる方法を検討した。βLCCDがスメクチック液晶構造をとり、環状骨格を層状に規則的に配列させることが可能となった。これは、分子カプセルの規則的な3次元配列を可能とする分子集積技術へと応用される。