- 著者
-
高田 浩司
- 出版者
- 岡山大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
昨年度から引き続き、各地から出土した弥生・古墳時代の銅鏃について、報告書などから形態・法量・年代等に関するデータの収集を行った。また、重要な資料については、各地の博物館や埋蔵文化財センターが保管する銅鏃を実見して、実測やデジタルカメラによる撮影などを行うなどして資料の調査・記録を行った。以上のデータをパソコンにデータベース化する作業を進め、ほぼ全国の資料について終えることができた。これらの基礎的なデータをもとに銅鏃の製作技術、地域性、生産・流通の検討を行った。従来の研究では、各地で製作されていた弥生時代の銅鏃が古墳時代にいたって畿内を中心とした政治的権力によって一元的に生産され、それが各地に配布されるようになったと指摘されてきた。しかし、製作技術や形態などを詳細に検討すると、古墳時代においても弥生時代と同様に、地域ごとにそれぞれ特徴をもっており、地域性がみられることが判明した。そして、古墳時代も畿内からの一元的な配布のみならず、弥生時代と同じように、列島の各地域でも生産が行われ続けていたことを明らかにすることができた。以上から、弥生時代を経て古墳時代にいたって形成された政治体制の特質は、重要物資の流通に関して、その一部を掌握しつつも弥生時代から続く各地域独自の生産・流通体制を温存しっつ、それをうまく自らの政治システムの中に組み込むことによって政治体制の維持を行っていたという結論にいたった。