著者
大矢 靖子 宮川 久邇子 高田 茂樹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.563-572, 1996-06-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究では現代の食生活の実態および食生活を規制すると思われる要因との関連を明らかにすることを目的に, 本学の女子大学生430名, 近畿圏の女子高校生958名を対象にアンケート調査を行った.本報では, 食行動を把握するうえで重要であると思われるイメージに焦点をあて, 外食, 調理済み・半調理済み食品, 手作り料理のイメージの実態について報告した.結果の概要は次のとおりである.(1) 外食のイメージは「便利」「楽しい」「雰囲気が良い」「塩分が多い」「カロリーが高い」などであった. (2) 調理済み・半調理済み食品のイメージは「便利」「はやい」「手抜きである」「カロリーが高い」「野菜が少ない」「栄養バランスが悪い」「体に悪い」「愛情がない」などであった.(3) 手作り料理のイメージは「こっている」「食べ物の温度が温かい」「おいしい」「体に良い」「安全である」「楽しい」「雰囲気が良い」「愛情がある」「手問がかかる」などの項目に得点が高かった.(4) イメージを学年別, 居住形態別, 食生活満足度別にみたところ, 学年別, 居住形態別には大きな差はみられなかった.食生活満足度別にみたイメージでは, 食生活に満足でも不満でもない者は, 調理済み・半調理済み食品のイメージが明確でない傾向がみられた.(5) 手作り料理のイメージについては, 食に満足している者は, 「おいしい」「野菜が多い」「栄養バランスが良い」「体に良い」「衛生的である」「安全である」「楽しい」「雰囲気が良い」「愛情がある」「好き」などの手作りにより良いイメージをもっていた.(6) イメージを本学学生・近畿圏の高校生別にみたところ本学学生の方が, 高校生よりもイメージがはっきりしており, 特に経済面や栄養面, 安全面などにその傾向がみられた.(7) 本学学生のイメージ得点から因子分析を行ったところすべて第7因子まで得られ, 累積寄与率からそれぞれ5因子で約80%が説明できた.外食, 調理済み・半調理済み食品, 手作り料理とも第1因子はムードに関する因子で, 5因子までに共通して含まれていた他の因子は, 健康因子, 味・経済因子, 安全性因子であった.
著者
足立 由美 高田 茂樹 雄山 真弓 松本 和雄
出版者
関西学院大学
雑誌
教育学科研究年報 (ISSN:02889153)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.7-14, 2003-03-25
被引用文献数
1

近年,コミュニケーションメディアの多様化やその普及・影響について論じられているが,携帯電話の急速な変化・普及とそのことが与える影響については研究・議論が追いついていない感さえある.本稿では,2回の調査によって携帯電話コミュニケーションの実態から見えてきた大学生の対人関係について考察することを目的とする.特に携帯メール利用についての実態を報告するとともに,性別分析の結果も報告する.調査は関西学院大学の学生に対して,質問紙調査を行った.1回目の調査(以下調査1)では携帯電話の所有率や利用実態について,2回目の調査(以下調査2)では調査1の結果に基づき,携帯メールの利用実態についてより詳細に尋ねた.調査1は2000年6月中旬から8月末にかけて,調査員5名が大学内,または大学周辺で個別に調査を実施した.収集したデータ数は197名分であり,有効回答数は195名(男性94名,女性101名)となった.調査2は2002年1月中旬から1月末にかけて,調査員2名が学部の講義に出席していた学生を対象に集団または個別に調査を実施した.収集したデータ数は305名分であり,有効回答数は302名(男性161名,女性141名)となった.調査結果から,大学生にとって携帯電話は単なる情報伝達手段ではなく,最も身近なコミュニケーションメディアであることが明らかになった.特に携帯メールによる文字コミュニケーションは同世代の対人関係の絆や依存意識を高めるものとして機能していると考えられる.本研究から携帯電話の通話相手および携帯メール相手と普段の依存対象との正の相関が示された.携帯電話によるコミュニケーションの対象を見ると,音声通話ではほとんど出てこないきょうだいや先生が携帯メールでは挙げられている.このことは携帯メールコミュニケーションが対人関係を広げる可能性を示唆したものだと言えるだろう.その反面,不特定相手とのEメールへの希望は減少してきていること,恋人との音声通話および携帯メールの頻度の高さ,そして恋人への依存度との高い正の相関などから,狭い選択的人間関係の中で絆を深めるのに携帯メールが使用されていることも読み取れる.また,携帯メールは男性よりも女性に利用頻度が高いという先行研究の結果が再確認された.男性にとって携帯電話は積極的に新しい人間関係(特に異性関係)を広げるもの,女性にとっては親しい仲間(特に同性の友人と)の絆を強めるものとして機能する可能性が考えられる.携帯電話というメディアが対人関係に与える影響についてさらなる研究が期待される.