著者
小林 航 高畑 純一郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.117-131, 2017 (Released:2021-08-28)
参考文献数
11

本稿では,公債の課税平準化機能に関するLucas and Stokey(1983)のモデルから,不確実性を除去したうえで生産性をパラメータ化し,消費と余暇に関する分離可能な効用関数のもとで,最適税率が異時点間で一定になる条件を導出する。閉鎖経済では,消費の限界効用の弾力性と労働供給の限界不効用の弾力性がそれぞれ時間を通じて一定となることがその条件となる。他方,開放経済では,割引因子と債券価格が等しいという仮定のもとで,労働供給の限界不効用の弾力性が一定であることが条件となる。そして,関数型を特定化し,政府支出や生産性の変化が最適税率に与える影響を分析する。その結果,准線型関数や開放経済においても,生産性が変化する場合には最適税率はかならずしも一定とならないことなどが示される。
著者
高畑 純一郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.200-219, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
25

年金の議論が盛んになってきているが,特に関心がもたれているのは財政方式の問題である。公的年金の財源調達法には比例賃金税方式と消費税方式などがあり,それに依存して資源配分が変化する。本研究では,雇用・年金・債券市場に市場の不完備性を組み込んだ動学的一般均衡モデルで,年金保険料の徴収方法によって資源配分がどのようになるかを観察し,どの程度の年金水準が望ましいのか,どちらの財政方式で厚生が高くなるかについて,日本経済をカリブレートしたパラメーターを設定して,定常状態で評価した。その結果,いずれの方式でも最適な保険料率は0%であることが示された。また,一定の規模で年金を実施する場合,想定するパラメーターの下では,消費税方式の方が比例賃金税方式よりも望ましいことが示された。これは,消費税方式での資本蓄積を妨げない効果等が,比例賃金税方式での雇用リスクを和らげる効果等を上回っているためであると考えられる。