著者
高畑 英樹
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.354-364, 2018 (Released:2020-12-03)
参考文献数
35

誤答率の高い九九は,通常の学級及び発達障害児を対象とした結果とも,4(し)と7(しち),7(しち)と8(はち)の音韻が似た数字の入っている九九が多かった。また,2月の段階では,7×6と6×7,7×4と4×7のように,交換法則の成り立つ九九をセットで間違えている可能性が高かった。通常の学級と比べて,発達障害児の九九学習における誤答の特徴をあげるとすれば,被乗数が7,8,9と九九学習後半で学習する数が多かった。特異数については,通常の学級では,1と5の正答数が高くなっていることから,かけ算九九において1と5は正答率が高く機能する特異数であることが示唆された。発達障害児のかけ算九九において,正答率が高く働く数字として機能する特異数は,1のみであった。通常の学級で正答率の高い特異数として示唆された5の数字が,被乗数または乗数に含まれる九九では,誤答率の高いものが2つあった。
著者
高畑 英樹
出版者
日本応用教育心理学会
雑誌
応用教育心理学研究 (ISSN:09108955)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-30, 2019-07-31 (Released:2022-12-19)
参考文献数
23

研究1で,九九学習においても,ワーキングメモリの役割は大きく,ワーキングメモリに課題のある児童には,ワーキングメモリへの負荷を軽減できる学習方法が重要であることが明白となった。研究2 では,ADHD 児とASD 児の障害特性とワーキングメモリとの2 要因をもとに,九九学習への配慮に必要となる要因の組み合わせの類型化を行った。その結果,認知特性と障害特性の両方に配慮のいるタイプ,認知特性のみに配慮のいるタイプ,障害特性のみに配慮のいるタイプ,配慮をあまり必要としないタイプの4 つに分かれた。ADHD またはASD のある4 事例による研究3 の結果から,九九学習でADHD 児とASD 児の障害特性や認知特性に着目したときの配慮や支援として,長所活用型学習方法の使用,特性に応じた学び方の保障,注意・集中の問題から起こるつまずきの予防という3 つの視点が大切であるということが導き出された。