著者
高藪 縁 青梨 和正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、第一に衛星データを利用して降水システムの特性を統計的に表現する手法を開発すること。第二に、現実の熱帯域における気候条件と降水システム特性との関係を解析することによって、大規模場の気候条件が降水システム特性に及ぼす影響の解明を目指すことである。初年度の2003(平成15)年度には、熱帯降雨観測計画(TRMM)衛星の降雨レーダー(PR)データの統計解析を行い、PRによる降雨データから3ヶ月ごとの卓越降雨タイプ(夕立、大規模組織化システム等)分類を特定する手法の開発に成功した(第1章:片山・高薮)。2004(平成16)年度は、TRMMマイクロ波放射計(TMI)データから求めた海面水温と海上の降雨特性の関係を調べるとともに、熱帯積雲対流活動と大規模場との相互関係を、高層ゾンデ観測データを用いて解析した(第2章:横森・高薮)。また、「熱帯域の背の高い降雨の特性の海面水温依存性に関する研究」を行った(第3章:高薮)。一方、PRとTMIとのマッチアップデータを作成し、より多くのデータが得られるマイクロ波観測から降雨タイプ特定を可能にするための調査を行った。2005(平成17)年度は、「衛星搭載マイクロ波放射計データを使った降水タイプの特定の研究」においては、2003年度に降雨レーダーを用いて行った片山と高薮による降雨タイプ分けをTMIデータのみから行うための統計解析を行った。その結果TMIとPRとの降雨特性の顕著な対応を見出すことができ、TMIによる降水タイプ分類に見通しがたった(第4章:青梨)。また、2004年度に行った「熱帯積雲対流活動と大規模場との相互関係」についての解析結果を再検討し推敲して発表した(第2章:Takayabu他2006,学術誌発表)。以上の成果はすでに高精度降雨推定手法の開発に利用されている。