著者
高野 道代 福田 文彦 石崎 直人 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.562-574, 2002-11-01 (Released:2011-08-17)
参考文献数
37
被引用文献数
3 1

【はじめに】近年、良質な医療が求められ、その指標の1つとして、医療に対する患者の満足度が重視されている。勿論、鍼灸医療においても良質な医療を提供し、患者の満足度を重視していくことが大切である。しかしながら鍼灸医療に対する満足度について多面的な観点から調査された研究はない。そこで、我々は鍼灸院通院患者の鍼灸医療に対する満足度及び満足度に影響を与える要因について疫学的に検討したので報告する。【対象・方法】対象は、明治鍼灸大学同窓会会員の開業する鍼灸院からランダムに抽出した101軒の鍼灸院に通院した患者2,210名とした。調査期間は平成12年7月10日~同年7月23日の2週間であった。調査票は健康状態、鍼灸治療状況全般、鍼灸以外の医療機関の利用状況 (治療院、病院等) 、患者の基本情報等で構成し独自に作成したものを使用した。回答形式は、Visual Analogue Scale (VAS) 、選択式回答法、自由回答法を使用した。調査は、標本調査による配布郵送調査法にて実施した。統計解析は、t検定、信頼性分析、Pearsonの相関係数、重回帰分析 (変数増加法) を使用した。【結果】回収数は、1,319通 (59.7%) であった。満足度 (有効回答数 : 1268名) は、VASにおいて平均81.4±13.8であった。満足度と他の内容とで有意に相関を認めた内容は、治療効果、施術者の技術評価、施術者の信頼度、施術者の理解度、説明の分かりやすさ、施術者の説明度であった。さらに、重回帰分析では、治療効果、施術者の技術評価、施術者の信頼度、診療室の清潔さ、訴えの理解度、尋ねやすさが抽出された。【考察】鍼灸院通院患者の鍼灸医療に対する満足度は高値であった。それは治療効果、施術者の技術評価といった治療要因、施術者の信頼度、訴えの理解度、尋ねやすさといった施術者の人間的要因、診療室の清潔さといった環境要因の3つの要因で構成されていることが示された。
著者
北川 毅 高野 道代 王 財源
出版者
The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.37-50, 2011-02-01
被引用文献数
1

近年、 美容が鍼灸業界などで話題を集めている。 専門学校や一部の大学などでは、 すでに授業の一環として行われ、 臨床現場においてもの日々、 要望が強まりつつあるのが現状である。 ほんの十数年前までは美容のために鍼灸が用いられることは一部を除いてタブー視され、 鍼灸師の美容に対する関心は高くはなかった。 しかしながら鍼灸を 「美」 の世界に求められるといった背景には、 健康のみでは満足しきれない、 より高い生活の質を望む私たちの、 若さと美しさへの願望が見え隠れしているようにも感じられるのである。 これは日本のみではなく、 隣国の中国でも同じ事が言える。 中国の美容産業は年々と増加し、 ダイエットブームによる自然健康食品の大流行、 富裕層の増加にともなうエステ市場にも、 化粧品会社の参入が、 日々、 美容市場を拡大させているという。 日本でもここ数年間における美容産業は年々と広がりをみせる。 このような中で、 2010年6月に第59回全日本鍼灸学会学術大会が大阪中之島にある国際会議場で開催された。 とりわけ今回の鍼灸学会に、 初めて美容鍼灸の公開実技が行われることもあり大きな話題を呼んだ。 定員350名の会場が隙間なくギッシリと満席となり、 さらに座席がなくて立ち見席で埋め尽くされ、 遂には入場制限までが出るほどの反響をぶりであった。 そこで今回は学会で実技を公開してくださった方々の先生方の美容鍼灸に対する考え方や、 施術法について執筆をお願いし、 今後の美容鍼灸のー展望となれば幸いである。